開放的な夏、灼熱の太陽に灼かれ続けたキャンパスにも
ひんやりとした風が吹き始める。
そんな秋の気配を感じ始めた9月のある日
取り巻きの学友達に誘われて、大学近くにあるいい感じの喫茶店に
幸子はいた。
その、喫茶店の一角で夏休みを満喫したのであろう
真っ黒に日焼けした幸子の友人たちはひと夏の
アバンチュールをきゃっきゃと話している
その中で幸子だけは耳を真っ赤にして聞いていた。
妄想の世界では何度もシュミレーションしてはいたが、
友人たちは自分よりも早く大人の階段を登り始めている。
なんだか友人たちが光輝いて見え、幸子は羨ましく思い
そして軽い焦りも感じるのだった。
幸子の夏の思い出といえば恒例の家族旅行だけであり、
それも清里の別荘に泊りバーベキューをするぐらいである。
子供のころは楽しみにしていたが、成長するに従い
なんだか物足りないと感じるようになっていた
それでも大学生になった幸子は、彼女なりにキャンパスライフを
満喫しているつもりだったが、この友人たちの赤裸々な
体験談を聞いた後では、自分の人生だけがなんだかつまらないものに
感じられるのだった。
幸子は厳格な教育方針のせいで自分には男友達さえ
作れないのだと思うと、父親のことをが疎ましく思えるのだが
そう感じてしまった自分自身に罪悪感も憶えるのであった。
しかしそんな幸子に千載一遇のチャンスが訪れる
なんと幸子の両親が、結婚20周年記念で沖縄旅行に
いくというのだ
続く