その人はいつも笑顔だった


はじめての運動会前夜

あした一番になるねって言ったとき

笑顔で両手を繋ぎ一緒に跳び跳ねてくれた



当日、二番にもなれず

校庭の片隅で泣いていたとき

後ろから優しく抱いてくれた

なにも言わずに



反抗期だった中学生のとき

部屋に閉じこもったわたしに

どこからどうやって登って来たのか

二階の窓から上半身だけのり出し

笑顔でミルクティーを差し出した


わたしは、その人の笑顔しか知らなかった

そういう人なのかなって思っていた


でも昨年の母の日に

肩を叩きながら勇気を出して

こう言ったときだった


今まで、ありがとうねお母ちゃん

すずめの囁きほどの小さな声で


母は身体中を震わせ泣いていた

わたしも一緒に泣き出した



そっと心の中でつぶやいた

これからは我慢しないでね

ずっと愛してるよ

そして貴女は私のかけがえのない人だよ