ぎゃん!!!
人間に蹴飛ばされ、俺は宙を舞い
粗大ゴミの冷蔵庫に思い切りぶつかった。
しゅーた「い…てぇ…」
小太郎も、ボコボコにやられている。
しゅーた「シャーク…早くこいよ。
何、やってんだよ。」
体が痛い…
「お!まだ生きてんのか?
アイツと一緒に、ずっと眠らせてやろうか。へへ…」
鉄パイプを片手に、ヘラヘラ笑いながら、俺に近づいてくる…
しゅーた「う…動けねぇ…」
フゥー!
ニャーゴ!ウゥー!
「お、おい!」
「何だ?」
暗闇に光る…👁…👁…👁…👁…👁
「囲まれてるぞ!」
しゅーた「やっと、来たか…
シャーク、おせーよ!」
シャーク「悪いな。
でも、大勢連れて来たぜ。」
悪い人間達を、何十匹もの猫が取り囲んでいた。
「お、おい…」
「たかが、猫だ!蹴散らせ!」
鉄パイプを振り回す人間をかわし、
猫達は、人間に襲いかかった。
噛みつき、爪で引っ掻き、
身体中に猫がまとわりつき、
人間は、身動きがとれなくなった。
「痛ぇ!ヤメろ!コラ〜」
「ダメだ。はらっても、はらっても、
猫が来やがる!」
「ヤバイ、逃げるぞ!」
「早く、車に…コラ〜やめろって!」
「わかった、わかった。
退散するから、もう、やめてくれよ〜」
三人の悪い人間達は、慌てて車に向かって、走り出した。
「逃すか!」
「追いかけろ〜!」
大勢の猫が、追いかける。
シャーク「やめろ!そこまでだ!」
シャークが叫んだ。
「でも…」
「もっと、懲らしめようぜ!」
シャーク「お前ら…
俺の言うことが聞けねぇのか?」
鋭い目で、睨みつけると、
緊張が走り
一斉に猫達が、静かになった。
「わかったよ、シャーク。」
悪い人間達は、急いで車に乗り、
凄いスピードで、走り去って行った。
シャーク「追いかける価値もねぇよ。
それより、しゅーた達を助けないと。
おい、しゅーた。大丈夫か?」
しゅーた「ああ、何とか…」
「お兄ちゃん…」
隠れていた子猫が、しゅーたに駆け寄る。
しゅーた「お前が、無事で良かった。
あ!小太郎…」
小太郎に駆け寄り、頬を舐めたが、
全然、動かない…
シャーク「…意識ねぇな。
猫が大勢いても、この人間は運べねぇ。
はて、どうするかな?」
しゅーた「………あ!」
シャーク「いい考えあるのか?」
小太郎が車に跳ねられた時を思い出した。
あの時、サクラが気付いてくれた。
言葉は通じなくとも、サクラなら、わかるかも……
しゅーた「知り合いの人間に、知らせてくる。悪いが、このチビを俺の家まで送ってくれ。
あと、俺が人間を連れてくるまで、小太郎を見ててくれよ。」
シャーク「わかった。
おい!クロとサスケは、しゅーたとチビを送っていけ!
アイツらが、また戻ってくるかもしれない。
俺は、残りの仲間と、コイツを見てるよ。」
しゅーた「ありがとな、シャーク。
急いで行ってくる。頼むぞ!」
シャーク「まかせろ!」
しゅーたは、よろよろと痛む身体を支えられながら、町へと向かった。
シャーク「おい、お前たちは、周りを見張れ。
残りは、この人間を囲んで暖めろ。
いいか?」
ニャーゴ!ニャーゴ!
シャークに指示された猫達は、
素早く、自分の持ち場についた。
「シャーク、この人間、冷たいぞ!」
シャーク「……脈はある。
しゅーたが来るまで、暖めるんだ。」
「わかりました!」
あたりは、すっかり暗く冷えてきた、
青白く、月だけが、光っていた。
シャークは、見晴らしのいい廃材の上に登り、町の方向を見つめた。
シャーク(あの人間、ヤバイぞ。
しゅーた、急げ!)
🏥日高犬猫病院 院長室
與「まだ、意識が戻らないなんて…」
日高「うん…
ここは、検査する機械が限られている。
写らない場所に原因があるかもな。
與、お前の病院で見てもらえないか?」
與「俺も、今そう考えていました。
酸素ボンベをつけて、移動すれば大丈夫かと。」
日高「よし、飼い主を呼んで話すか。」
與「俺、呼んで来ます。」
院長室から、與さんが出てきた。
與「サクラ、院長が話あるって。
こっちに来て。」
サクラ「はい。西島さん…」
西島「うん…」
院長室に入ると、日高先生が小太郎のレントゲン写真を見ていた。
サクラ「先生…」
日高「猫ちゃんだけど…
目覚めない原因がわからない。
見た限りは、脳にも大きな障害はみつからない。
どうでしょう…
與の病院は、設備も整っています。
猫ちゃんの為にも、転院しては?
與も来てますから、すぐに移れますよ。」
與「サクラ、そうしよう。
隣町だし、猫にも負担かからないよ。
俺が責任持つから。」
サクラ「…明日のお昼には、目覚めるの。
だから、他には移れない。」
日高「明日の昼に目覚めるって?
そんな確証はないよ。」
サクラ「小太郎がそう言ったの。
お母さんに言われたって…」
西島「え、母さん…?
小太郎がそう言ったって…?
サクラさん、小太郎は猫だよ。」
サクラ「うまく、説明できないけど、
本当なの。明日の昼には、目覚めるから。
ここの場所からは、動かさないで。
お願い……」
日高「手遅れになったら、どうする?
もしかしたら、1分1秒を争うかもしれないよ。」
サクラ「詳しいことは、言えないけど、
お願いします。明日の昼までは、ここに置いてください!」
よくわからないが、サクラの必死さは、そばにいた皆んなには、伝わった。
西島「先生、今はサクラさんが小太郎の飼い主です。サクラさんの希望通りにしてあげましょう。」
日高「まあ、無理強いはできないな。
飼い主さんがそう言うなら、もう少し様子をみましょう。」
與「サクラ、ホンマにそれでいいの?」
サクラ「うん…お願いします。」
小太郎が、明日の昼まで、西島さんそっくりな人間になってるなんて、言えないけど、隣町に転院したら、小太郎が戻るのは難しい気がした。
與「なんか、わからんけど。
いつでも、転院引き受けるから、
サクラ、連絡してな。」
サクラ「うん、ごめんね…」
もう一度、小太郎の様子を見に行った。
相変わらず、呼びかけても撫でても反応しないが、脈と呼吸は、しっかりしているみたいだ。
西島「サクラさん、もう暗いから、また明日こよう。」
サクラ「うん、ごめんね。
変なこと言って…」
西島「明日の昼には、良くなってるといいよね。家まで、送るよ。」
サクラ「ありがと…」
確かに、目覚めるという確信はない。
だけど…小太郎がそう言ったから、
信じたい…
西島さんの車で、家まで送ってもらった。
あ!小太郎がいるとまずい…
サクラ「西島さん、ありがとう。
ここでいいわ。」
家の2軒手前で、車を止めてもらった。
西島「え、いいの?
すぐそこだから、家まで行くよ。」
サクラ「あ、大丈夫。
じゃ、また明日病院でね。」
急いで、車を降りた彼女が不自然だったが、きっと疲れていているんだろうな。
西島「サクラさん、
じゃゆっくり休んで。」
サクラ「うん…」
発進した、西島さんの車を見送り、
急いで、家に入った。
小太郎、一人でウロウロして、
西島さんと鉢合わせする所だった。
注意しとかなきゃ…
サクラ「ただいま〜」
サクラ母「お帰り。」
サクラ「あれ?西島さんは?」
サクラ母「サクラを追いかけて、小太郎の病院に行ったわよ。会わなかった?」
やっぱり…
サクラ「うん。まだ帰ってないんだ。」
何処、行ったんだろ…
「わ!母さん!」
風呂場から、父さんの声。
サクラ母「何よ。どうしたの?
湯加減、丁度いいはずよ。」
風呂場に行くと、湯船が泡だらけ…
サクラ母「綺麗に洗ったはずよ。
何でこんな…サクラ、知らない?」
小太郎だ……
サクラ「し、知らないわよ。
まだお風呂入ってないし。」
サクラ母「不思議ね。
お父さん、とりあえず、シャワーで良く流して。」
「しょうがないな〜」
それより、小太郎だ。
もう、暗くなってるし…
トントン!トントン!
え?何だろ…
カーテンを開けると、末吉さんちの猫が窓ガラスを叩いていた。
泥だらけで、アチコチ血が出てる…
サクラ「大丈夫?どうしたの?」
サッシを開けると、足元をぐるぐる回り、外に行き、振り返る。
あの時と同じ…
サクラ「また、小太郎に何かあったの?」
しゅーた「にゃー」
しゅーたは、よろつきながら、外に促しているようだ。
サクラ「ついて行けばいいの?」
しゅーた「にゃーにゃー」
…良かった、通じた!
そうだよ、サクラ。
俺に、ついてきてよ。
サクラ「わかった、案内して。
母さん、ちょっと出かけてくる。」
サクラ母「今から?もう、暗いわよ。」
サクラ「大丈夫、行ってきます。」
胸騒ぎがする…
急いで靴をはき、外に出ると、
他に二匹の猫がいた。
サクラ「歩くの大変そう…」
それに、このキズ…
また、事故?不安は大きくなる…
サクラ「ねえ、無理しないで。
私がこの子を抱いて行くから、
他の猫ちゃんが案内して。
その方が、早く歩けるわ。
いい?」
にゃーにゃー
サクラの言葉がわかったのか、
弱った猫を抱くと、急ぎ足で前に進んで行った。
サクラ「小太郎見つけたら、すぐに病院に連れて行くからね。頑張って!」
サクラに抱かれて、安心したのか、
しゅーたは目を閉じた。
…かなり、歩いた。
もう、町外れ…
外灯は所々にあるけど、暗い。
廃材置き場?ここに小太郎が…?
え…何、この猫達。
凄い数……
抱いていたしゅーたが、サクラの腕をするりと抜けた。
シャーク「以外と早かったな。」
しゅーた「うん、すぐ気付いてくれて。
小太郎は?」
シャーク「まだ、意識ないな。」
しゅーた「小太郎!サクラ連れてきたぞ!」
呼びかけても、反応がない…
サクラ「え…え…?」
しゅーたが駆け寄った所に、大勢の猫に囲まれて、小太郎が倒れていた。
サクラ「小太郎!」
泥だらけで、キズだらけ…
一体、どうして…
脈は、微かにあるが、ぐったりしている。
サクラ「救急車!」
あ!だめ…
この子は、普通に人間で見てもらえるのかな?実体がどうなってるか、わからないし…
でも、早くしないと、死んじゃう!
どうしよう……
頭の中が真っ白…
シャーク「おい、この人間、大丈夫か?
こんな、痩せっぽちじゃ、運べないし。」
しゅーた「サクラ、頼むよ。
小太郎を助けてくれよ。」
サクラ「信じてくれるかわからないけど、頼んでみよう。」
携帯を取り出して、電話をかけた。
早く、出て!
「はい、どうしたの?サクラさん。」
サクラ「西島さん、助けて!
急いで、町外れの廃材置き場に来て欲しいの。」
西島「廃材置き場?
どうして、そんな所に…」
サクラ「とにかく、早く来て!
小太郎が、死んじゃう!」
西島「小太郎は、病院だろ?」
サクラ「詳しくは、後で話すから、
お願い、急いで!
死んじゃう、死んじゃう…」
西島「わかった、すぐ行くよ。
サクラさん落ち着いて。」
サクラ「ごめん、お願い…」
小太郎の顔についた、泥を払い、
手を握った。…冷たいよ…
サクラ「小太郎、頑張って!
明日の昼には、戻れるのよ。
死なないで!」
サクラの目から涙が溢れた。
