小太郎「あれ?ここ…どこだ?
あ、サクラ…
サクラ…泣いてる?
俺なら、大丈夫だよ。
全然、痛くないし…ほら!」
俺は、ゴロゴロ転がってみせた。
サクラ「麻酔切れてるはずなのに、
小太郎、目が覚めない…」
西島「先生…」
日高「まあ、そんな急にはな。
呼吸も安定してるし、もう少し様子を見よう。」
サクラ「まさか、このまま…」
日高「大丈夫だよ。」
小太郎「だから〜俺、元気だって!
ほら、ほら!見てよ。」
俺は、サクラのそばを走りまわった。
小太郎「え…?サクラ、俺のこと見えない?
おい!西島〜、俺のこと、見えんだろ?
……なんだよ。みんなで俺をからかってんのか? ちぇっ!」
俺は、頭にきて外に出た。
小太郎「あ、しゅーた…
俺のこと心配してんだろうな。
赤ちゃん猫、大丈夫だったかな?
よし!見に行ってみるか。」
俺は、しゅーたの家に向かった。
塀の所に、血の跡があった。
小太郎「あ……俺の血?
俺、ここまで飛ばされたのか?
すげー痛かったからなぁ。」
小太郎「おーい、しゅーた!いるか?」
……返事がない。いないのか?
庭にまわると、縁側で、しゅーたとしゅーたの母さんと赤ちゃん猫が、日向ぼっこしていた。
小太郎「なんだ、いるんじゃないか。
しゅーた!しゅーた!」
……呼んでも、誰も気づかない。
何だよ、しゅーたまで……
赤ちゃん猫は、しゅーたの母さんに抱かれて、スヤスヤ眠っていた。
よかった、無事で……
しゅー母「この子、家の子にしようか?
お前、妹が欲しいって言ってただろ?」
しゅーた「母ちゃんがいいなら、別にいいよ。」
しゅー母「小太郎ちゃん、大丈夫かな。
心配だね。」
しゅーた「うん…」
そう言って、しゅーたは、赤ちゃん猫を優しく舐めた。
小太郎「しゅーたも、俺が見えないのか?
おい!冗談やめろよ。
俺、ここにいるって!」
何度 叫んでも、無駄だった…
俺は、何故かみんなには、見えないんだ。
え…?
縁側の、ガラス戸に写る俺は…
俺じゃなかった。
…に、人間…?
何で……俺、どうなってんだ?
さっきまでは、猫だったぞ!
しかも、奴にソックリ……
もしかして……俺、事故のショックで
人間になれたのかな?
前に、母さんが呼んでくれた
絵本の、ピノキオみたいに…
俺の願いを聞いて、神さまが魔法をかけてくれたとか?
だとしたら、サクラといつも一緒にいられるし、話も通じるし……
ご飯も、好きなものをいつでも食べられるなぁ。
…でも、サクラビックリしないかな?
あいつと間違えないかな?
しゅーたは、俺が人間だから、
きっと、気づかないんだな。
よし!!試してみるか。
俺は、サクラの家に向かった。
確か…これを押すんだよな。
ピンポーン✴︎
サクラ母「はーい!」
小太郎「こんにちわ…」
サクラ母「あら、変ね。
誰もいない…いたずらかしら?」
小太郎「え…母さんも、
俺が見えないのか?」
サクラ母「気のせいかしら?」
母さんが、ドアを閉める直前に、
俺は、家の中に入った。
小太郎「俺、どうなってるんだ?」
母さんは、ソファーに座り、
お決まりの韓国ドラマを見ている。
サクラ母「あ〜いいとこだったのに、
見逃した〜!」
そう言って、母さんはテーブルにある、
カステラに手を伸ばした。
小太郎「うまそ〜!
母さんばっかり、ズルいぞ…」
母さんがテレビに目を移した瞬間に、俺は素早くカステラを手にとった。
どうせ、見えないから、わかんないよな。
俺は、母さんの隣に座り、カステラを一口食べた。
小太郎「うま!
しかも、いつも少ししか俺にくれないじゃん。たくさんあるし…」
俺は、そっともう一つカステラを手に取って、階段を登り、二階のサクラの部屋に入った。
サクラ母「あら?カステラ…
無くなってる。
確か、後 2つあったのに。変ね?
ドラマに夢中で、無意識に食べちゃったのかしら?」
小太郎「ふぅ〜、うまかった。
サクラ、まだ帰ってこないかな?」
部屋の窓から、外を眺めると、
以前とはまた違う景色に見えた。
小太郎「なんか、すげーよな。
人間になれたなんて…
でも、誰も気付かないのは不思議だけどな…」
小太郎「ふ…あ…
眠くなったなぁ……」
俺は、サクラのベッドの上に座り、
そのまま、横になって目を閉じた…