📱💥
西島「……?誰だろう……はい……」

ゆり「隆弘~何で家に来ないのよ。
母さん、また君のこと忘れちゃうよ。」

西島「お姉さん?……すみません。仕事が忙しくて、現場に一日いるんで、つい……」

ゆり「今日は、来てね。
夕ご飯作って待ってるからね。」

西島「今日も、遅くなるかも……」

ゆり「みっくんに言っておいたから、今日は、早く帰れるはずだから。」

西島「日高課長に電話したんですか?」

ゆり「隆弘の番号、聞いてなかったから、みっくんに聞いたの。
絶対、来てよ。」

西島「はい……
あの……実彩子さんは、
  最近……来てますか?」

ゆり「毎日、昼休みに来てるわよ。
お弁当とお菓子とか持って……
会社近いからね。」

西島「そう……ですか。
今晩は、来るんですか?」

ゆり「誘う?隆弘、連絡してよ。」

西島「いや……番号知らないし……」

ゆり「え、知らないの?
このあいだ、一緒に帰った時、
聞かなかったの?」

西島「……はい」

ゆり「じゃあ、私から連絡しておくから、じゃね~」

西島「あ、ちょっと……」

電話は切れた……

末吉が休んでるので、順調にすすんでたのが、急に現場がガタガタになっていた。
色々、チェックしたり、人手が足りないと、一日現場に入ったりで、実際、余裕はなかったが……

あの日……実彩子さんにキスをしてしまったことの後悔もあり、
また、顔を会わせる気まずさもあり、
母さんには会いたかったが、行きづらかった……

日高「西島~
ゆりから、電話きただろ?」

西島「はい、今……」

日高「ゆりから聞いたよ。
お前も、色々あったんだな……
とにかく、せっかく会えたんだから、お母さんを大切にしろよ。
今日は、俺がついてるから、早くあがれ……」

西島「しかし……」

日高「とりあえず、今日は行けよ。
明日は、どうなるか、わかんねえぞ。」

西島「はい……じゃあ、よろしくお願いします。」

日高「おぅ!任せろ。
あ、遠藤ちゃ~ん、進み具合はどうだ?」

遠藤「いや~なかなかね。
末吉さんいないと……
俺の言うこと、全然きかねぇし……」

日高「あんまし、ガタガタだと、
末吉にどやされるぞ。
今日も、1時間くらい残業してくれると、助かるなぁ……」

遠藤「俺は、全然いいんすけど、
若いのがなかなか言うこときかなくて……」

日高「若いの……誰だ?」

遠藤「最近入った翔が、若手を
まとめてて、やりにくいっす……」

日高「翔?」

遠藤「あの金髪です……」

背の高い、ガッシリした体格、
鋭い目……

日高「まあ、あせらずにやるさ。
一応、残業できるか声かけててくれ。」

遠藤「わかりました。」


西島「俺も残ります。」

日高「だから、お前は今日は、いいって。約束破ると、俺がゆりに怒られるから。」

西島「わかりました。
じゃあ、お願いします。」

現場を定時にあがり、
母さんの待つ、K市に向かった。🚕



途中、スーパーを通り過ぎた。

あの夜……俺らしくもなく、
母さんに覚えててもらったのが、
うれしくて……
つい、泣いてしまって……

実彩子さんが、助手席から、
俺を抱きしめてくれた……たぶん、
恋愛感情からでは、なかったと思う。

でも、俺は……
彼女が好きだから、勘違いして……
彼女を引き寄せ、抱きしめて……
  ……キス……

彼女が、両手で俺を押して、離れたとき、俺は勘違いに気付き……

「ごめん……」と謝ったが、
彼女は無言で下を向き、 
気まずいまま、家に送っていった。

彼女の心の中には、まだ、和也がいる。
中学の時からだから、
二人の思い出は、俺なんかが入り込めないくらいに、たくさんあって……

それを俺は……
自分勝手に無理矢理、入り込もうとした……

きっと、俺のこと……
 嫌いになったよな……

顔、会わせたくないよな……


母さんの家に付くと、
ちょうど、直也兄さんが、車から降りた所だった。

直也「お、隆弘くん来たな。」

西島「はい、なかなか来れなくて……」

ゆり「隆弘~いらっしゃい。
直くんも、おかえり~」

直也「定時で帰るの、大変だったんだぞ。おまけに買い物とかさ~」
 
ゆり「はいはい、ありがとう。
いい子ね~着替えて、手伝ってね。」

直也「子供じゃねえって~
はい、はい…わかってますよ~」

「隆弘、いらっしゃい。」

母さんが、玄関まで出迎えてくれた。

西島「すみません。なかなか来れなくて……」

母「いいのよ……さ、入って。
お茶いれましょうね。」

🍵

母「仕事は、慣れたの?」

西島「初めて、俺の設計が採用されたんです。依頼主にも気に入ってもらえて……でも、色々大変で……
先輩や現場の人達に助けられて、
なんとか、やってます。」

母「そう、良かったわね。」

西島「……それで、なかなか来れなくて……」

母「いいのよ。
たまに、こうして来てくれれば……」

母さんは、この前会ったときより、
落ち着いていた。

ゆり「隆弘……あ、勝手に呼び捨てしてたけど、いいよね?弟だし……」

西島「はい。ぜんぜん、うれしいです。」

ゆり「あ、実彩子ちゃん、来れないかも……一応、電話したけど。」

西島「そう、ですか……」

ゆり「喧嘩でもしたの?
実彩子ちゃんも、隆弘の話をすると、黙っちゃうし……変だよ。」

直也「まあまあ、ゆりちゃん。
あまり、追及しないの。
手伝うから、キッチンに行こ!」

ゆり「うん……」


西島(やっぱり、来れないよな……)

母「隆弘……おいで……」

西島「はい?」

一番奥の、母の部屋に行くと……

仏壇があり、笑っている和也の写真があった。

母「お線香、あげてくれる?」

西島「はい……」

母と二人で手を合わせた……

母「隆弘……もう、遠慮しなくても、いいのよ。離れていた時間は長かったけど、本当の母親と姉なんだから。」

西島「はい。ありがとうございます。」

母「あなたは、双子だけど、和也の代わりはしなくてもいいの。
隆弘は隆弘らしく、生きていいのよ。実彩子ちゃんのことも……」

西島「え?」

母「好きなんでしょ?
でも、和也に遠慮してる……」

西島「亡くなったばかりだし……
美沙子さんは、和也といた時間が長かったし……心の中は、和也でいっぱいだし……」

母「すぐには、無理ね……
でも、二人がお付きあいしても、
きっと、和也は応援してると思うわ。」

西島「そうかな……」

母「和也は、そういう子だったから……」

西島「優しかったよね……」

母「あなたも、優しい……」

ゆり「そろそろ、ご飯にしますよ~」

西島「はい、今行きます。
母さん、行こう……」

母「今日は、ゆりと直也くんにおまかせしちゃったわね。」

西島「このあいだの肉じゃが、おいしかったです。また、作ってください。」

母「わかったわ。」

直也「俺の作った、しょうが焼きもあるぜ~」


西島「すげ~いいにおいです。」

直也「今日は、🍺ビールいいの?」

西島「すみません。明日も仕事なんで……」

直也「またか?今度は、絶対泊まれよ!」

西島「はい、ぜひ……」

ゆり「直也、飲みすぎると、ヤバイから……」

直也「そんなこと、ないし……
ゆりちゃんは、ざるだし……」

ゆり「そう、だけど~」

直也「そこ、認めるんだ~
じゃ、母さんと隆弘くんは、烏龍茶でいい?」

西島「はい、いただきます。」

来て、良かったと思った……

母さんに、隆弘として生きろと
励ましてもらったし……

実彩子さんのことも……


🏡🏡🏡

実彩「ねぇ、和也……覚えてる?
はじめて、手を繋いで帰った日……
海辺ではじめて……キスしたこと……
プロポーズしてくれた日のこと……
私は、忘れないよ……
ずっと、ずっと忘れないからね。」

ゆりお姉さんから、電話が来た。

ゆり「隆弘が、今晩家に来るの。
実彩子ちゃんも、一緒にどう?」

実彩「……今日は、ちょっと……」

ゆり「都合悪い?
隆弘と喧嘩でもしたの?」

実彩「あ、いえ!
そんなんじゃ……本当に、用事あるんです。」

ゆり「そう?じゃ、また今度ね。」

実彩「はい……すみません……」

部屋の中は、日記帳でちらかっていた。
和也との思い出が、たくさん書いてある……

次から次と、日記帳を読んでは、
和也のことを思いだし、
西島さんのぬくもりを打ち消していた。

実彩「忘れなきゃ……」

日記帳を読めば読むほど……

あの日の、西島さんの
泣いてる顔が、浮かんできた……