曖昧なデータで不安を煽る『ペットビジネス』の世界 | トイプーお出かけ日記

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犬との生活、食べたもの、買ったものを主なテーマとしています。
あと、たまに時事問題について書いたりもします。

私は犬との生活を初めてもうすぐ丸4年になるんですが、その間いろいろなことを調べてきて、どうにも腑に落ちないことがいくつかあります。

 

その中の一つがフィラリア対策。

 

ゴールデンウイークも終わってこれから気温がどんどん上がって蚊の活動が活発化してくるので、ちょっと真面目に思うことを書いてみることにしました。

 

 

 

フィラリア対策については

  • 日本全国津々浦々、犬種も年齢も問わず、すべてのワンコに春先から晩秋まで、定期的にフィラリア予防の駆虫剤を与えるのが当然
  • 駆虫剤を忘れようものなら飼い主失格

という風潮があると思うんですが、私はそのような主張をする人が信用に足る十分な根拠データを示していない、と思っています。

 

 

フィラリア対策に限らず、ペットビジネスはデータを示さずに不安を煽ることが常態化していると私は思っており、ありがちなのは、

  • ○○し過ぎると、最悪△△になってしまうかもしれないので、絶対□□はNG

というやつで、このテの論調はタマネギやらチョコレートなんかでよく見かけます(笑)。

 

 

別にタマネギなんかは犬に必要なものではなく、与えなければいいだけの話だと思うんですが、薬はそうはいきませんよね。

 

薬は使用するにあたり、効果(ベネフィット)と与えることによるリスク(副作用、事故等)を天秤にかけなければならないからです。

そして、その判断のためにはデータが必要になります。

 

 

市販されている薬は安全性が確認されているので問題ない、という見方もあるとは思いますが、動物医薬品は

  • 効能、効果があると認められないとき
  • 効果、効能に対して著しく有害な作用があり、使用価値が認められないとき

に承認しないことが法律で定められており、これって言い換えると、

  • 効能、効果が認められるのであれば、著しく有害な作用がない限り動物用医薬品は承認される

ということだと私は理解しています。

 

 

 

 

 

だからこそ、しっかり調べて納得したうえで薬を与えたいんですが、飼い主が参考にできるような有意なデータって開示されていますか?、そんなものないじゃん、というのが私の現時点の結論です。

 

 

 

私が最も知りたいのはフィラリアの感染リスクなんですが、それについては、例えば犬の飼育頭数700万頭(日本ペットフード協会調べ)をベースにしてさらに

  • 駆虫薬の投与頭数
  • フィラリアに感染した頭数
  • フィラリアで死亡した頭数

が明らかにされれば、

  • 非投与頭数(700万から投与頭数を引く)
  • 感染率(感染頭数を非投与頭数で割る)
  • 死亡率(死亡頭数を非投与頭数で割る)

を求めることができます。

 

<ペットフード協会の資料>

 

 

そこでいろいろ調べてみたんですが、まぁ訳の分からん結果になってしまいました。

 


1.フィラリア駆虫薬の投与頭数

ある動物病院のHPによると、投与率は30%台前半(3頭に1頭)とのことでした。

 

これがいつ時点のものなのか、誰が調べたものなのかは不明ですが、仮にこの情報を「正」とすると、フィラリア駆虫薬の非投与頭数は約490万頭(700万頭の70%)となります。

 

 

2.フィラリアの感染率

ある薬局のHPによると、駆虫薬を投与しない場合の感染率は22%とのことです。

 

ここのデータも先ほどの動物病院と同様に、いつだれが調査したのか全く明らかにされていません。

このような対応は、私の社会人としての常識から大きくかけ離れたものなんですが、これがペット業界では「当たり前」なんですかね。

 

 

3.フィラリアの感染頭数

上記データに基づいて試算すると、

  • 駆虫薬の非投与頭数が490万頭
  • 非投与の犬の感染率が22%

とのことですので、フィラリア感染頭数は107万頭となります。

 

もしこれが本当なら、日本中の動物病院がフィラリア感染犬で溢れかえることになりますな(笑)。

 

因みにですが、某製薬会社のHPには「発症したのを聞いたことがない」というQ&Aが掲載されており、その回答は当然ながら何のデータもなく「かもしれない」のオンパレードでした。。

 

 

 

あと、そもそもフィラリアの原因となる「犬糸状虫」を保有している蚊がどれくらいいるのか、は製薬会社の広報誌「オールインワン通信(2020 vol.2)」に掲載されていました。

https://n-d-f.com/forvet/pdf/material/202010allinonenews_vol2.pdf

 

 

これもデータの出典が明示されていないので必死に調べたんですが、金沢の調査が金沢大学の医学部によるものと分かっただけで、他はどこの誰の調査なのか分からずじまいでした。

 

それにしても、製薬会社がよくもこんな古くて立地が偏ったデータを平気で出してくるもんだと思います。

 

 

以上は私が調べた中のほんの一例ですが、共通して言えるのは、

  • 数字を出さない
  • 数字を出す場合であっても出典を示さない(いつだれがどのように調べたか全くわからない)
  • それでも結論はどこも一緒(駆虫薬を与えましょう!)
ということで、個人的にはペットビジネスの世界から出てくるデータはイマイチ信用ならん、それゆえその結論も信用ならんと思っています。
 
 
 
4.蚊はそもそも犬の血を好まない

では何が信用できるか、ということなんですが、私は公的な機関から出てくるデータは信用できると思っています。

そこからいくつか参考になりそうな蚊の生態に関するデータを紹介します。

 

【国立感染症研究所】

吸血嗜好性(犬より鳥や人を好む)に加え、活動時間や活動場所も記載されています。

 

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/kj_kankyo/mosq/mosq_kousyuukai/r2/ka2020_kaseitai.pdf

 

 

【厚労省】

同じような話ですが、厚労省のデータも貼り付けておきます。

https://www.niid.go.jp/niid/images/ent/PDF/chikungunya.pdf

 

 

この調査によると、ヒトスジシマカの場合、犬はその他10%の一部、アカイエカの場合は7%に過ぎず、圧倒的に人が刺される確率の方が高いということになります。

 

さらに犬糸状虫保有蚊の割合を考慮すると、犬が刺されてフィラリアに感染するリスクは高いわけではなく(むしろ低い)、駆虫薬以外の予防法で十分ヘッジできると私は思っております。

 

 

 

次は駆虫薬自体が持つリスクについてです。

 

 

 

5.駆虫薬のリスク

つづいて駆虫薬を与えることのリスクについてです。

動物の医薬品については、使用上の注意や副作用、承認の過程における議事録など、様々な情報を動物医薬品検査所のホームページで確認することができます。

 

 

ここではノミ・ダニ、フィラリアをまとめて駆除できるネクスガード・スペクトラについて確認していきます。

 

【使用上の注意】

生まれて間もない子犬(8週齢未満)や体重の軽い犬(1.8㎏未満)などには与えてはいけません。

また、使用前に必ずミクロフィラリアがいない状態にする必要があります(必ず獣医さんに診てもらう必要があり、自身の判断で投与するのはリスクがある)。

 

 

 

【副作用】

副作用は以下の通りです。

 

なお、ネクスガードスペクトラは平成27年6月の動物用医薬品部会で承認の審議がなされたのですが、その議事録には安全性について以下のような記述があります。

https://www.maff.go.jp/nval/syonin_sinsa/gijiroku/pdf/h270604gijiroku2.pdf

 

 

軽度な事象ではあるものの、71頭中5頭に有害事象が見られたとのことです(因果関係は「ない」らしいですが)。

 

最後に、動物医薬品検査所の「副作用データベース」からネクスガードスペクトラの死亡例についていくつか貼り付けておきます。

それぞれの事例に因果関係、獣医師や製薬会社のコメントが記載されているので、それらをきちんと確認することをおススメします。

 
事例①
 
事例②
 
事例③

 

事例④

 

事例⑤

 

事例⑥

 

事例⑦

 

事例⑧

 

事例⑨

 

事例⑩

 

 

 

 

いろいろ長々と書いてきましたが、以上を踏まえ、私は

  • もともと犬糸状虫を持っている蚊は少ない(データは古いが3%程度)
  • ヒトスジシマカ、アカイエカともに犬よりも人や鳥の血を好む

ことに加え、

  • 我が家の愛犬は都心の室内で生活している
  • ワンコの散歩時間を蚊の活動時間帯から外す
  • 散歩時にロンパースを着せて防虫スプレーをかける(ハーブを使った自家製のもの)
  • 駆虫薬を使うことのリスクは馬鹿にならない(副作用に加え、我が家のワンコは体重が1.8kg前後のティーカップなので)

のでフィラリア駆虫薬に頼らない、ことにしています。

 

当然に結論はそれぞれのワンコの住む環境などによって全然違ってくるのですが、どのような結論になるにせよ、副作用を含めたリスクベネフィットを検討して、飼い主が自身の判断に納得することが大事なのではないかと思っております。