それにしてもさくらは驚いた。無口な英樹がこんなにしゃべった事、英樹から離婚を切り出した事、竜二の存在を知られていた事。内緒で英樹の父親に会いに行き、その帰りに竜二の病院へ見舞いに行っていた事を知っていながら英樹が黙っていた事。
竜二の存在を親子で知られていたなんて。
沢山の感情が一気に沸き上がり、いたたまれなかった。
昨日までの事は知られていたが、今日の事は知られていなかった。
今日、遺産がさくらに入った事は英樹は知らない。
英樹の話の中で焦った事は、子供の存在を強調してきた事だ。子供なんて興味なさそうにしていたのにそこに幸せを感じていたなんて。
簡単に返事は出来ないので慌てて話を変えた。
「あなたは誰になんで刺されたの?今日は仕事だったんじゃなかったの?」さくらは本当に不思議だった。朝、普通に仕事に向かった旦那が作業着のまま刺されるなんてどこの嫁が予想出来るだろうか。
無差別な通り魔的な犯行としか今は想像出来なかった。
「そうなんだわぁ、仕事だった。そこて刺されてのは間違いない。ただ、今日刺されたのは間違いないんたけど、そこに至るのには深い、長いしがらみみたいなモノが在るわけよ、誰も俺の苦労なんて分かってくれないけどな」
これまでの半端な人生を明るく開き直って語ろうとする英樹の表情は別人かと思う程疲れていた。ただ、出血が多かったのだろう、肌は白く人でないようにも見えた。
