私に超能力があったなら、今すぐ娘の手を動かすのに…
何度そう思ったか。
今日も今日とて、教室前方でいつまでも動こうとしない娘の手に、動け、さぁ手を動かして問題を解くのだ…!そう念じる。

やっと動き出した

途端、無常にも聞こえる「やめ」の合図。
「やめ」の「や」が聞こえるやいなやパッと手を止めクーピーを置く娘。
うん、そうだよね。
やめっていわれたら、やめるんだよね。
でもね、ママはあと0.5秒くらいは粘って、丸のひとつくらいは付けて欲しかった。
だって、あなたのその0.5秒は、おおよそ250円なんだから。

はい、ほとんどのお友達ができてましたね!
の言葉に、クラリと視界が揺れ、汗が吹き出す。
おかしいな、冬だよねいま。
なんだったら外扉が開きっぱなしでさっきまで震えていた。

そうだ、こんなことで焦ってはいけない。
比べていいのは先週の我が子だけ、と
尊敬してやまないあの先生が仰っていた。
落ち着け私。

考えるんだ。
何のためにこんな最前列で背筋を伸ばし、必死にメモをとっているのか。
周りの優雅なお母様たちの雰囲気に圧され、
お受験界に身をおいていいのか迷いながら、
それでも惚れ込んだあの素敵な学校を目指しているのではなかったか。

自問自答しながら、なんとか姿勢を保ち、
崩れ落ちそうな心をたてなおす。

その間も忙しく手はメモをとる。
ここで書いておかなくては今夜からの家庭学習に支障をきたし、教え方もわからず自分の首を絞めることになる。

毎週授業で落ちこぼれ、次の週までに必死に追いつき、そしてまた授業で落ちこぼれる。
周りの子たちのなんとよくできることか。

笑顔で戻ってきた娘に、メンタルの強さと切り替えのはやさに羨ましさすら感じつつ、
なんとか絞り出した笑顔をむける。
頑張ってたねーと掠れた声で伝えると、
一層輝く娘の顔。
そうだ、この子はお勉強が大好き(できるかどうかは別のお話)。
ペーパーも苦にすることなく、毎日続けている。
それで充分ではないか…!

受験をすると決めたあの日から、
そこそこ胸を張れる程度には丁寧に生きてきた。

たとえ合格を手にすることができなくても、
無駄にはならない。私達家族にとって。

そんなお受験の焦りと葛藤と反省の日々がまた明日も明後日も続く。