海水から採取したマグネシウムでエネルギー循環社会が実現

http://news.livedoor.com/article/detail/7321932/


原発再稼働の是非が議論されるなか、日本の技術者によって新たなエネルギーの開発が進んでいる。太陽光や風力だけではない、日本には知られざる「国産資源」がまだまだ存在する。我が国は、実は資源大国だったのだ!!

◆海水や砂漠から採取したマグネシウム利用で、エネルギー循環社会に

「自分でやっていてワクワクしますよ。’12年7月に特許を取った私のマグネシウム電池を使えば、スマホなら1か月間充電は不要で、その電池に必要なマグネシウムはたったの6円。ノートパソコンのバッテリーも2~3gほどで大丈夫。16kgのマグネシウム電池を搭載した車なら500kmを移動でき、電池代は3800円で済みます」

 東京工業大学の矢部孝教授は、太陽光励起レーザーという高性能のレーザーを使い、海水からマグネシウムを分離することに成功した。

「マグネシウムは海水中に約1800兆t、石油30万年分に相当する量が存在します。その存在は世界中の科学者が知っていましたが、『エネルギー源としては無理』だと考えられてきました」

 だが、矢部教授は独自の資源化の方法を考案した。

「まず、海水の淡水化です。私はエレクトラというベンチャー企業を立ち上げ、ほとんどエネルギー不要の淡水化を実践しています」

 海水を淡水化をする過程で塩とにがり(塩化マグネシウム)が残る。この塩化マグネシウムにレーザー光線を当てるとマグネシウムが生まれるのだ。「マグネシウム生成の工程で食塩と水を生み出すので、日照時間が長く、上水の確保が必要な沖縄の離島などが適地となります。四方を海で囲まれた日本にとっては、まさに資源の宝庫。そのほか、マグネシウムは砂漠の砂などにも豊富に含まれています」。

 矢部教授は、2~3年のうちにマグネシウム燃料電池の開発に取りかかり、3~4年のうちには大量生産にこぎつけようとしている。そして、スマホやPCに限らず、自動車や新幹線もマグネシウムだけで走ることを目指している。

「マグネシウム燃料電池を使えば、鉄道はパンタグラフが不要になります。新幹線は500km走行も可能になるでしょう」

 驚くのは、その効率の良さだ。マグネシウムはロケット噴射にも利用されるように、高エネルギーを出す。それと同時に、今主流のリチウムイオン電池の7倍半もの電力量を保持するという特性がある。例えばスマホは一日で1000~1500mA/時の電気を消費するが、これはたった1gのマグネシウム燃料で賄えるという。電気自動車もマグネシウム燃料なら16kgで500kmを移動できる。

 矢部教授が思い描くのは、マグネシウムの燃料化だけではない。マグネシウムを使った「循環型社会」の構築だ。

 発電が終わったマグネシウムは「酸化マグネシウム」になるが、これにレーザーを当て、マグネシウムとして再生する。その工場も、場所は未定だが、’13年から試験的に稼働するという。

※「循環型社会」のイメージはこちら⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=360070

「例えば、お祭りで露天の焼きそば屋とかありますね。どこも小型発電機で明かりをつけていますが、マグネシウム電池なら20kWhの容量で一晩もちます。これができたら100kWhも大丈夫です。だって、20kWhのカセットを単純に5つ用意すればいいだけですから。’15年にはアメリカの自動車関連メーカーとの協力で自動車用マグネシウム電池の大量生産に着手する予定です」

 日本のメーカーはどうなのか?

「日本の自動車メーカーは充電にこだわっているんです。でも車の充電って30分はかかるので不便です。それよりも、例えばコンビニでマグネシウム電池のカセットを買って、使いきったらそこに返すシステムのほうがはるかにいいと思うんです」

 10tの海水から取れるマグネシウムは13kg(標準世帯1か月分の電力を確保できる)。ただし、この装置はレンズ性能の向上にまだ2~3年の時間が必要なので、当面は半導体レーザーなどの既製品を利用した開発に取りかかる予定になる。