につきご質問をいただいて(記事「4A出身のH30予備試験合格者の皆さんへ」のコメント№7)、他の受験生の皆さんにも役立つと思ったので、記事にしました。
題材は、予備H30論文[民法]設問2㋐です。
pdfファイル↑のレイアウトが崩れてしまいますが、以下、問題文の関係部分をコピペします。
【事実(続き)】
6.Cは,本件事故の前から,妻Fと共に,自己所有の土地(以下「本件土地」という。)の上に建てられた自己所有の家屋(以下「本件建物」という。)において,円満に暮らしていた。本件土地はCがFとの婚姻前から所有していたものであり,本件建物は,CがFと婚姻して約10年後にFの協力の下に建築したものである。
7.Cは,Aからの損害賠償請求を受け,平成29年7月10日,Fに対し,…「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまうので,離婚しよう。本件建物は本来夫婦で平等に分けるべきものだが,Fに本件土地及び本件建物の全部を財産分与し,確定的にFのものとした上で,引き続き本件建物で家族として生活したい。」と申し出たところ,Fは,これを承諾した。
8.Cは,平成29年7月31日,Fと共に適式な離婚届を提出した上で,Fに対し,財産分与を 原因として本件土地及び本件建物の所有権移転登記手続をした。Cは,上記離婚届提出時には,本件土地及び本件建物の他にめぼしい財産を持っていなかった。 CとFとは,その後も,本件建物において,以前と同様の共同生活を続けている。
〔設問2〕
Eは,平成30年5月1日,Aから,㋐CとFとは実質的な婚姻生活を続けていて離婚が認められないから,CからFへの財産分与は無効ではないか,㋑仮に財産分与が有効であるとしても,本件土地及び本件建物の財産分与のいずれについても,Aが全部取り消すことができるのではないか, と質問された。
…Eは,弁護士として,㋐と㋑のそれぞれにつき,どのように回答するのが適切かを説明せよ。
題材は以上です。
さて、この設問2㋐の「CとFとは…離婚が認められない」かどうかについて、法的知識が全くのゼロの状態(=関係条文の存在すら知らず、参照もできない)なら、どのように解答しますか?
※司法試験系の論文本試験現場では、上記に近い状態に追い込まれることは結構あります。実際、本問も、手薄になりがちな家族法分野の出題だったためか、上記に近い状態に追い込まれた受験生が結構いたようです。
…我々が論文本試験現場で持っている武器は、
・問題文
・六法
ですが、“法的知識が全くのゼロの状態(=関係条文の存在すら知らず、参照もできない)”という設定なので、
・問題文
を使うしかありません。
それでは、問題文“だけ”で、設問2㋐に解答しましょう。
…「そんなことできないよ!」って?
難しく考えすぎですよ~ヘ(゚∀゚*)ノ
・CとFとの離婚が認められると思った人は、問題文から、離婚が認められる方向の事情をできる限りピックアップして書き写しつつ、文章化するだけです。
・CとFとの離婚が認められないと思った人は、問題文から、離婚が認められない方向の事情をできる限りピックアップして書き写しつつ、文章化するだけです。
…「そんなんでいいの?」とか思いました?
だって、“法的知識が本当に全くのゼロの状態(=関係条文の存在すら知らず、参照すらできない)”ですから、こうするしかないじゃないですか!
何も書かないよりは、点数が入りそうでしょ?問題文の事情自体に配点されていることは、司法試験の出題趣旨・採点実感等からも明らかですし。
また、積極ミスをして減点リスクを負った答案(が、私の手元に来た再現答案全体の3分の1くらいありました…)と比べると、だいぶ合格可能性に差がつきます。問題文の事情自体には、ミスがないと考えてよいのですから。
もし余裕があれば、自分の持って行きたい方向の事情を書く前に
“確かに、(逆方向の事情)。しかし、”
と書くと、加点が期待できますよ~
答案としては、例えば、以下のようになります(下線部は問題文のコピペ)。
①離婚が認められる方向
確かにCは,Aからの損害賠償請求を受け,平成29年7月10日,Fに対し,「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまうので,離婚しよう。本件建物は本来夫婦で平等に分けるべきものだが,Fに本件土地及び本件建物の全部を財産分与し,確定的にFのものとした上で,引き続き本件建物で家族として生活したい。」と申し出たところ,Fは,これを承諾した。 また、CとFとは,離婚届提出後も,本件建物において,以前と同様の共同生活を続けている。
しかし、Cは,平成29年7月31日,Fと共に適式な離婚届を提出した以上、離婚は認められると考える。
②離婚が認められない方向
確かにCは,平成29年7月31日,Fと共に適式な離婚届を提出した。
しかし、Cは,Aからの損害賠償請求を受け,平成29年7月10日,Fに対し,「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまうので,離婚しよう。本件建物は本来夫婦で平等に分けるべきものだが,Fに本件土地及び本件建物の全部を財産分与し,確定的にFのものとした上で,引き続き本件建物で家族として生活したい。」と申し出たところ,Fは,これを承諾した。また、CとFとは,離婚届提出後も,本件建物において,以前と同様の共同生活を続けている。
このような離婚は、認められないと考える。
いかがでしょう?
これだけで設問2㋐単体の相対評価で合格ライン(B~C評価)に達するか?と問われたら、さすがにYesと断言はできませんが、設問1や設問2㋑で容易にリカバーして、合格ラインどころかA評価にも達しうるレベルだ!と断言することはできます。
だって、合格ライン(B~C評価)以上の再現答案も、あやふやな法的論述をせいぜい数行しか書けていないような状況ですから。
あと、余裕があれば、コピペした問題文の事情を一言“評価”できると、さらに加点が期待できます。
例えば、②ラストで、
このような財産隠しのための形式的な仮装離婚は、差押えの抜け穴となってしまうので、認められないと考える。
と書くとか。それまでの論述の意味合いを抽象的に要約する感じですから、中高の現代国語でやった作業と似ていませんか?
司法試験系に限らず法律系の試験は、突き詰めれば全て、
言葉の使い方
の試験なんですよ~