という、戦略・戦術的思考に関するタイトルを付けたが、その好例について語りたいだけなのである。
その好例とは、先日のジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)第19ステージにおける、クリス・フルーム(チームスカイ全員)の鮮やかすぎる戦略的大逆転劇!
お分かりいただけただろうか…完全に私の趣味トークになるので、予備論文直前期対策で忙しい人にとっては時間の無駄かもしれません\(^_^)/
さて、フルームは現在、自転車ロードレース界の第一人者といえる存在なのだが、昨年末にサルブタモール基準値超え問題が発覚した(※競技者によるサルブタモールの使用は、喘息等の治療目的で吸入する場合に限り認められる)。
この問題は未だ解決に至っておらず、フルームは“疑わしい”状態で今年のジロ・デ・イタリアに出走したのだ。
その序盤は振るわず、ライバルといえるサイモン・イェーツやトム・デュムランに総合タイム差を広げられていく一方だった。
中盤の第14ステージでは勝利したが、第18ステージ終了時点での総合タイムは首位イェーツと3分22秒差の4位で、3位までの表彰台争いに絡むか…という程度だった。
「サルブタモールを使わないフルームは、この程度なのか…」
「チームスカイは今回のジロを、7月のツール・ド・フランス(※上記問題のためフルームは出られない可能性も)のための調整に使う意図か?」(※チームスカイはツール・ド・フランス総合優勝が至上命題…と見られている)
といった思いが頭をよぎらなかった人はいないだろう。
私もそうだったし、ライバルたちもそうだったのではないだろうか。
そして、第19ステージが幕を開ける。
全長は185kmと世界の自転車ロードレースの中ではそう長くないが、獲得標高(登り下りする高度差)が約4500mという難易度最高(☆☆☆☆☆)の山岳ステージである(cf.シクロワイヤードさんの記事「アルプス山岳で驚異の80km独走勝利を果たしたフルームがマリアローザ獲得」の冒頭付近の画像)。
公式ハイライト動画↓
チームスカイは山登りの最初からハイペースを刻み、疲労がたまっていた首位のイェーツは早々に脱落してしまう(結局フルームから38分遅れてゴールし、総合タイムトップ10からも脱落)。
ここでフルームのライバルは前年度覇者のデュムランに絞られたわけだが、ゴールまで約80kmの地点でフルームがアタックすると、デュムランはついていけなかったorついていかなかった。
結局このままフルームが独走でゴールし、2位のデュムランに40秒差の総合タイムトップ(バラ色のジャージを着る栄誉から、“マリア・ローザ”と呼ばれる)に躍り出た。
私が本当に語りたいのはここから!(σ・∀・)σ
首位イェーツが第19ステージで早々に脱落したのは、第18ステージまでデュムランと熾烈な総合トップ争いを繰り広げ、疲労がたまっていたからだろう。
つまり両者(の属すチーム)は、もはやフルーム(チームスカイ)を少なくとも第一次的なライバルとは見ずに、互いに潰し合っていたことになる…事後的に見れば。
チームスカイは、そのような戦況を創り出すため、サルブタモール基準値超え問題をも逆手にとって、「フルーム取るに足らず」と両ライバル(チーム)に思わせたのでは…そして、第18ステージまでフルームを温存し、疲労のたまった両ライバルを、最も差をつけやすい難易度最高山岳ステージの第19ステージでぶっちぎる!…こういう戦略を、最初から立てていたのではないか。
戦略・戦術大好きな私は、このように思えてならない…こういうふうに想像(妄想)すると楽しい!
チームスカイは特に、薬物にクリーンだというイメージを流布していたので、フルームのサルブタモール基準値超え問題等の薬物問題に追い込まれていたと思うのだが、そのような逆境にあろうと、それをプラス方向で利用することは可能なのだ。
その後、フルームは第20ステージで総合首位を守り、あとは日本時間で今夜の最終第21ステージを残すのみである。
ただ、ジロ・デ・イタリアを含む3大グラン・ツール(他にツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)の最終ステージは、ゴール直前のスプリント以外はパレードランにするという強い慣例があるため、よほどのトラブルがない限りはフルームのジロ・デ・イタリア総合優勝となる。