「合格者に論文答案を見てもらって、こんなことを言われたのですが…」

といった質問・相談を受けることが結構ある。


まず、司法試験系(そして法曹という職業)は、自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の足で進んでいくことが求められる“お・と・なの試験”(職業)なので(cf.動画「司法試験は、なぜ“難しい”のか? 」)、私の言説も含めて、鵜呑みにするのは論外である(以下、「合格者」には、当然私も含む)。

司法試験系の受験生たる資格すらないと言いたいくらいだ(言っちゃった)。


しかも、論文合格発表前から、自分が不合格だと決めつけたいかのような形で質問・相談されることも多い!

そりゃあ不安な気持ちは分かるけど、そんなに早く自分の負けを確定させたいの?

逆境でも、不安でも、最後まで諦めずに戦う気持ちが大事なことは、論文本試験を体験してきたあなた自身が痛感していることなんじゃないの?

そんなんじゃ、ブラジルW杯サッカー日本代表と大差ないよ?


そもそも、論文合格発表前には、予備校関係者の手元にすら、その本試験分析に使えるデータが充分にはない。

問題文と、成績なしで合否も分からない再現答案(+答案構成)と、各種文献だけだ。

なので、論文合格発表前の予備校(予備試験合格者スタッフもいるはず)の本試験分析すら、合格発表・成績通知、出題趣旨等の蓋を開けてみたら結構的外れだった…ということも、私の受験生時代からザラにある。


さて、アドバイスをくれたその合格者は、問題文はある程度読んで分析していると思う(思いたい)けど、今年の論文本試験の成績なしで合否も分からない再現答案すら、何通読んで分析したのだろうか。

この相対評価の試験で、論文答案の相対的な良し悪し(=合否)を判定するためには、問題文はもちろん、相当数の再現答案も読んで分析しなければならない。

しかも、成績なしで合否も分からない再現答案の分析となると、最初は手探りなので、かなりの時間がかかる。

そういった地道な作業をしないで、ほんの少しでも根拠をもって、論文答案の相対的な良し悪し(=合否)を判定できる合格者がもしいたら、その人はかなりの過去問(再現答案)フェチなはずなので、是非紹介していただきたいものだ。


それに、合格発表等の後の合格者だって、そんなに信用に値するものでもない。

まず、成績付の再現答案を徹底的に比較分析するような人は、予備校にすらほぼ皆無である。

また、受験生時代、様々な合格者講義(のガイダンス)を受けてきた私の経験上、自らの合格体験を、個人的な経験にとどまらず、多くの人に役立つ普遍的な経験として明確に説明できていた合格者は、ごくわずかだ。

「なぜ合格できたのか分からない・明確に説明できない」から、とりあえず、自分のやってきたことを全て伝えよう…そういう合格者ばかり。

もちろん、この言説も、“私の経験”に基づく印象論にすぎないが、合格者の講義・ゼミ等をいくつか受講したことがある人ならば、納得してくれることだと思う。


最後に。

合格者は、既に合格している以上、あなたが経験してきたその論文本試験現場を、実際に体験したわけではない。

その論文本試験現場で、制限時間等により物理的・精神的に追い詰められながら、実際にどれほどのことが可能だったのかは、想像を巡らせるほかないのだ。

この点では、論文本試験現場を実際に体験してきたあなたの方が、合格者より優位にある。

合格者等のアドバイスを“参考”にするのは大いに結構。

でも、最終的には、自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の足で進んでいくしかないし、そういう人が受かる試験なんです。