※私は、知識集中完成条解テキストという、おそらくどの類書よりも徹底的に条文単位にこだわったテキストを作っているので、条文単位のテキストのメリットを強調する立場にあることを念頭に置いて読んでください。


まず、

(1) 論文本試験現場では、(中大ロー入試の刑法のようなごく一部の例外を除いて)問題文のほかに、条文だけは参照できること

(2) 短答本試験でも、条文そのものの知識を問う問題や、条文を使って解かせる問題が多いこと

には、異論がないだろう。


もうこの時点で、条文単位のテキストのメリットは充分表現できているような気もするが、以下、具体的にどのようなメリットがあるのかを説明しよう。


1.条文単位のテキストのメリット

(1) 論文式試験対策

ア 論文本試験現場で条文が参照できるのはなぜか?

…もちろん、この参照できる「条文を使って論文本試験問題を解け!」ということだ。

だから、条文を使って論文本試験問題が解けるようになる必要がある。

そのために最も効率が良い対策は、条文を使って論文本試験問題を解く訓練を積むことだ。


しかし、現在市販されている論文本試験過去問集の答案や解説は、様々な文献(判例、学説等が中心)を調査した結果は載っていても、“条文を使って”論文本試験問題を解くプロセスの説明は、ほとんど載っていない。

そこで、少なくともそのインフラとして、条文の使い方が分かるような、条文単位のテキストが必要となる。


その条文単位のテキストとして、たとえばコンメンタール(条文注釈書)を使う手は否定しない。

しかし、基本書以上の知識量が書いてあるので、問題を解いた後に読むだけでも時間がかかり、内容全てを把握するのはまず不可能なので、くり返しくり返し使うことで自分のものにする“核となる1冊”とするのは事実上不可能だ(そもそもコンメンタールの用法としては、“辞書”的に使うことが想定されている)。


というわけで、読むのに時間がかからず、くり返しくり返し使うことで“核となる1冊”となりうる、試験対策用の条文単位のテキストが必要となる。

そういうコンセプトで、知識集中完成条解テキストを作っているので、ページ数とか記載内容は、論文・短答本試験問題を解くために必要な、条文の使い方を中心とした知識に絞っている。


イ また、どの受験生も、多かれ少なかれ、頭の中に知識・情報を蓄えて本試験現場に行く。

それに加えて、論文本試験現場に置いてある条文を使いこなすことができれば、他の受験生よりも高い戦闘力を備えていることになる。


しかも、論文本試験問題を解くために必要な知識・情報を条文から読み取れるようにしておけば、頭の中に蓄えて持って行くべき知識・情報の量が減る。

これにより、まず記憶の負担が減る。


しかし、それ以上にメリットとなるのは、自分の頭の中に目を向けないで済むということだ。

つまり、本試験現場で、自分の目の前にある問題文と条文に目を向ける姿勢になることで、「条文を使って論文本試験問題を解け!」という、おそらく未来永劫変わらない出題意図に、自然と答えられるようになる。

これに対し、自分の頭の中の知識・情報を、たとえば「あれ、この問題はあの判例に似てるな~どんな事案・判旨だっけ?」というふうにサーチしていると、どうしても、目の前の問題文と条文に向き合って分析する時間が少なくなるし、頭の中の知識・情報を優先して目の前の問題文と条文をねじ曲げて読んでしまうリスクが高まる。

“ありのままに事実を捉える”。これは、法律論以前の、基本中の基本中の基本。


…というわけで、論文本試験問題を解くために必要な知識・情報を条文から読み取れるようにしておく必要がある。

そのためには、少なくとも各知識・情報を条文とリンクしておく必要があるが、条文単位のテキストがそれに最も適した形であることは明らかだ。

しかも、知識集中完成条解テキストは、できる限り、条文の文言や趣旨(趣旨自体も、できる限り条文の文言から想起できるような表現にしているし、それが無理なものも記憶しやすいようにコンパクトな表現にしている)といった上位概念から、論文答案にそのまま書ける各知識を導けるようにしているので、論文本試験問題を解くために必要な知識・情報を条文から読み取る訓練が自ずとできるのだ。


ウ さらに、全ての法的知識は、条文から出てくる。条文以外から出てくる法的知識はない。

ということは、条文単位のテキストでなければ、そもそも法的知識を網羅できないはずなのだ。

知識集中完成条解テキストは、本試験問題を解くのに必要な知識は網羅して、それ以外の知識はガン無視だけど。


(2) 短答式試験対策

説明不要だよね?意外と長くなったんで、ちょっと面倒になってきちゃった…汗


2.条文単位のテキストのデメリット

要するに、物語のように読む形式にはならない、ってこと。

だから、従来のインプット先行型のいわゆる“お勉強”をしようとしている人には向かない。

少なくとも普段は、過去問を解き(アウトプット先行し)ながら“参照”するのが最も効率的な使い方だろう。

直前期は、普段そのような使い方をしていたことを前提とすれば、ザーッと全範囲を一気に読み流すのも、可能な人(私はそれすら不可能でした…)なら結構ありだと思うけど。