1.分析スタンスと第一印象
まだ誰も対策を確立できていない新試論文。
それは方法論マニアにとって、フロンティアだ。
これから、俺もそこに、一歩ずつ踏み込んで行こうと思っている。
今回は、H18新試論文の問題文・出題趣旨・ヒアリング(公法系・民事系・刑事系)にザッと目を通した段階(なので、誤った記述があるかも)で、全体的な第一印象みたいなものを書いておこうと思う。あ、選択科目以外ね。
「旧」試出身の俺としては、まずはどうしても「旧」試論文と比較する目で見ることになる。
その前提として、自分が「旧」試論文をどのような試験と見ているのかというと、
①2時間で2問という時間制限内において、できる限り
②問題文の事情に則して、
③当事者確定→生の主張反論→法的構成→要件あてはめの過程で問題を処理し、
④その過程で抽出された問題点について、適切な論述をすることで、
⑤合格する可能性を高められる試験
という感じだと思う。
で、それとH18新試論文全体とを比較した第一印象は、あまり変わってないなあ、というものだった。
確かに、最初に公法系第1問の出題形式を見たときは、全く別物になったのか!?とも思った。
でも、全体的に見ると、民事系の要件事実的な設問・科目横断的問題、刑事系の事実認定問題と併せても、「旧」試論文において現場思考を要する問題が出題された割合と同じくらいじゃないか、という印象になった。
2.「旧」試論文の要素別に比較
次に、俺が「あまり変わってない」という第一印象を持ったのはなぜか、上記した「旧」試論文の要素別に分析していく。
①時間制限
・初日:選択(3時間、2問、計100点満点)、公法系(4時間、2問、計200点満点)
二日目:民事系第1問(2時間、100点満点)、民事系第2問(4時間、200点満点)
三日目:刑事系(4時間、2問、計200点満点)
らしい。Wikiによれば。
ちなみに、H19は、初日と二日目の間に、休日が1日入るようだ。
・そして、答案用紙の使い方について、このような注意がある。「旧」試よりも、答案用紙を柔軟に使える可能性が読み取れる。(これ、研修所起案でも非常に重要なテクニックなのだが、研修所起案では用紙が無尽蔵にあるのに対し、新試論文では8ページしかないという制約があるため、研修所起案よりはシビアに答案用紙テクを磨いていく必要があるだろう。)
・以上から、「旧」試と比べると、制限時間が伸びて時間配分が難しくなった反面、その対策としての答案用紙テクが使いやすくなった、と言えると思う。
②問題文の事情
「旧」試と比べて、問題文がかなり長くなり、それをできるだけ使ってほしいという出題者の意向も明らかにされている。
このことから、「旧」試と比べて、問題文の事情に対する配点率がかなり高くなったと言えると思う。
③問題処理過程
・当事者確定
どの立場から解答するかについて、指定のある問題が多くなった。
ただ、「旧」試では、裁判官の立場から解答すべき問題がほとんどだったのに対し、新試論文では、当事者やその代理人の立場から解答すべき問題がちらほら。
そうすると、「旧」試よりも、当事者確定について考える必要のある場面が減った反面、問題文の指定に拘束されることで解答しにくくなる面も少しあるだろう。
・生の主張反論→法的構成
これについても、ある程度指定のある問題が多くなったため、「旧」試よりも、考える必要のある場面が減ったと思う。
ただ、民事系第2問設問3は、民法と商法の融合問題で、かつ動産・債権譲渡特例法というマイナーな法律も使うべき問題のようだ。また、民事系第2問設問1は、要件事実的な問題だが、これも法的構成段階に位置づけられるだろう。これらは、法的構成が難しい問題だと言える。皆がどの程度できたかは、今のところ分からないが、たぶん、あまりできなくても合格できる問題だと思う。
・要件あてはめ
「旧」試と比べ、②問題文の事情が多くなったため、この段階の比重が大きくなったと思う。
刑事系第1問の軽い事実認定問題は、この段階に位置づけられるだろう。殺意という事実認定の典型問題について、事前に押さえておいた判断要素にあてはまる事情を拾うだけだと思うので。
④問題点の抽出と、それに対する論述
・問題点の抽出
問題文が長くなったこと、問題文に指定が多くなったことから、問題点の抽出についてのヒントが増えた。
反面、小問で区切られておらず、かつ見慣れない問題文の指定がある公法系第1問などで、抽出された問題点のうちどれを書くか悩んだ人もいるだろうが、その悩み度合いについては、「旧」試とあまり変わらないような気がする。
新試自体の過去問があまりないことや、予備校答練への参加人数が少ないことなどから、皆が何を書いてくるかという相対評価の意識は持ちにくいだろうが、「旧」試の現場思考問題と同じく、問題文の事情の量と質によって優先順位をつければいいと思う。
・論述
問題点を明示し、それに対する結論を示すことが最小限の要素であることは変わらない。
その間をつなぐ理由づけについて、判例を示すべきだとか論証パターンがダメだとか色々な噂はあるが、これについては再現答案を分析しないと何とも言えない。
ただ、出題趣旨やヒアリングにザッと目を通した限りでは、この点について「旧」試と異なることが言われているようには思えなかったので、たぶん「旧」試におけると同様の扱いをしているのでは。
⑤合格可能性
合格ラインを事前に見抜くことが非常に難しく、自分の論文答案を採点する人の主観やミスにより左右される可能性もなくはない。
そうすると、100%合格する対策は立てられないので、合格可能性をできるだけ高める対策を立てるという姿勢が、受験生が採りうるベストな対応だと思われる。
この点は、「旧」試論文と全く同じ。
3.まとめ
以上から、新試論文は、
⑤合格可能性に対して受験生の採るべき姿勢は「旧」試論文と変わらないものの、「旧」試論文と比べて、
①時間配分が難しくなった反面、答案用紙テクが使いやすくなった
②問題文の事情に対する配点率がかなり高くなった
③当事者確定→生の主張反論→法的構成はやりやすくなったが、要件にあてはめる段階の比重が増大した
④問題点の抽出とそれに対する論述は、やりやすくなった
と思う。
この①~④の違いを、その違いをもたらした原因にまで遡ってさらにまとめると、問題文が長くなったという1点に集約されると思う。
このことから、「あまり変わってない」という第一印象になったんだと思う。
まだ誰も対策を確立できていない新試論文。
それは方法論マニアにとって、フロンティアだ。
これから、俺もそこに、一歩ずつ踏み込んで行こうと思っている。
今回は、H18新試論文の問題文・出題趣旨・ヒアリング(公法系・民事系・刑事系)にザッと目を通した段階(なので、誤った記述があるかも)で、全体的な第一印象みたいなものを書いておこうと思う。あ、選択科目以外ね。
「旧」試出身の俺としては、まずはどうしても「旧」試論文と比較する目で見ることになる。
その前提として、自分が「旧」試論文をどのような試験と見ているのかというと、
①2時間で2問という時間制限内において、できる限り
②問題文の事情に則して、
③当事者確定→生の主張反論→法的構成→要件あてはめの過程で問題を処理し、
④その過程で抽出された問題点について、適切な論述をすることで、
⑤合格する可能性を高められる試験
という感じだと思う。
で、それとH18新試論文全体とを比較した第一印象は、あまり変わってないなあ、というものだった。
確かに、最初に公法系第1問の出題形式を見たときは、全く別物になったのか!?とも思った。
でも、全体的に見ると、民事系の要件事実的な設問・科目横断的問題、刑事系の事実認定問題と併せても、「旧」試論文において現場思考を要する問題が出題された割合と同じくらいじゃないか、という印象になった。
2.「旧」試論文の要素別に比較
次に、俺が「あまり変わってない」という第一印象を持ったのはなぜか、上記した「旧」試論文の要素別に分析していく。
①時間制限
・初日:選択(3時間、2問、計100点満点)、公法系(4時間、2問、計200点満点)
二日目:民事系第1問(2時間、100点満点)、民事系第2問(4時間、200点満点)
三日目:刑事系(4時間、2問、計200点満点)
らしい。Wikiによれば。
ちなみに、H19は、初日と二日目の間に、休日が1日入るようだ。
・そして、答案用紙の使い方について、このような注意がある。「旧」試よりも、答案用紙を柔軟に使える可能性が読み取れる。(これ、研修所起案でも非常に重要なテクニックなのだが、研修所起案では用紙が無尽蔵にあるのに対し、新試論文では8ページしかないという制約があるため、研修所起案よりはシビアに答案用紙テクを磨いていく必要があるだろう。)
・以上から、「旧」試と比べると、制限時間が伸びて時間配分が難しくなった反面、その対策としての答案用紙テクが使いやすくなった、と言えると思う。
②問題文の事情
「旧」試と比べて、問題文がかなり長くなり、それをできるだけ使ってほしいという出題者の意向も明らかにされている。
このことから、「旧」試と比べて、問題文の事情に対する配点率がかなり高くなったと言えると思う。
③問題処理過程
・当事者確定
どの立場から解答するかについて、指定のある問題が多くなった。
ただ、「旧」試では、裁判官の立場から解答すべき問題がほとんどだったのに対し、新試論文では、当事者やその代理人の立場から解答すべき問題がちらほら。
そうすると、「旧」試よりも、当事者確定について考える必要のある場面が減った反面、問題文の指定に拘束されることで解答しにくくなる面も少しあるだろう。
・生の主張反論→法的構成
これについても、ある程度指定のある問題が多くなったため、「旧」試よりも、考える必要のある場面が減ったと思う。
ただ、民事系第2問設問3は、民法と商法の融合問題で、かつ動産・債権譲渡特例法というマイナーな法律も使うべき問題のようだ。また、民事系第2問設問1は、要件事実的な問題だが、これも法的構成段階に位置づけられるだろう。これらは、法的構成が難しい問題だと言える。皆がどの程度できたかは、今のところ分からないが、たぶん、あまりできなくても合格できる問題だと思う。
・要件あてはめ
「旧」試と比べ、②問題文の事情が多くなったため、この段階の比重が大きくなったと思う。
刑事系第1問の軽い事実認定問題は、この段階に位置づけられるだろう。殺意という事実認定の典型問題について、事前に押さえておいた判断要素にあてはまる事情を拾うだけだと思うので。
④問題点の抽出と、それに対する論述
・問題点の抽出
問題文が長くなったこと、問題文に指定が多くなったことから、問題点の抽出についてのヒントが増えた。
反面、小問で区切られておらず、かつ見慣れない問題文の指定がある公法系第1問などで、抽出された問題点のうちどれを書くか悩んだ人もいるだろうが、その悩み度合いについては、「旧」試とあまり変わらないような気がする。
新試自体の過去問があまりないことや、予備校答練への参加人数が少ないことなどから、皆が何を書いてくるかという相対評価の意識は持ちにくいだろうが、「旧」試の現場思考問題と同じく、問題文の事情の量と質によって優先順位をつければいいと思う。
・論述
問題点を明示し、それに対する結論を示すことが最小限の要素であることは変わらない。
その間をつなぐ理由づけについて、判例を示すべきだとか論証パターンがダメだとか色々な噂はあるが、これについては再現答案を分析しないと何とも言えない。
ただ、出題趣旨やヒアリングにザッと目を通した限りでは、この点について「旧」試と異なることが言われているようには思えなかったので、たぶん「旧」試におけると同様の扱いをしているのでは。
⑤合格可能性
合格ラインを事前に見抜くことが非常に難しく、自分の論文答案を採点する人の主観やミスにより左右される可能性もなくはない。
そうすると、100%合格する対策は立てられないので、合格可能性をできるだけ高める対策を立てるという姿勢が、受験生が採りうるベストな対応だと思われる。
この点は、「旧」試論文と全く同じ。
3.まとめ
以上から、新試論文は、
⑤合格可能性に対して受験生の採るべき姿勢は「旧」試論文と変わらないものの、「旧」試論文と比べて、
①時間配分が難しくなった反面、答案用紙テクが使いやすくなった
②問題文の事情に対する配点率がかなり高くなった
③当事者確定→生の主張反論→法的構成はやりやすくなったが、要件にあてはめる段階の比重が増大した
④問題点の抽出とそれに対する論述は、やりやすくなった
と思う。
この①~④の違いを、その違いをもたらした原因にまで遡ってさらにまとめると、問題文が長くなったという1点に集約されると思う。
このことから、「あまり変わってない」という第一印象になったんだと思う。