第1.小問1
1.(1) Cとしては、Aからの保証債務の履行請求を拒みたいところである。
しかし、連帯保証人であるCには、催告(452条)・検索(453条)の抗弁権がない(454条)から、同請求に応じなければならないのが原則である。(446条1項)
(2)ア.ただ、まず主債務者Bは、Aとの請負契約(632条)では1時間当たり5000個程度の商品生産能力があるとされていたのに、実際には1時間当たり2000個程度の商品生産能力しかないという工場用機械の「瑕疵」修補請求権を有する。(634条1項)
なぜなら、工場用機械の商品生産能力の「瑕疵」は「重要」といえるし、修理が可能である以上、「その修補に過分の費用を要する」わけでもないと考えられるからである。(但書)
ただし、Bは「相当の期間を定め」ず、直ちに本件機械の修補を求めているから、相当の期間経過後に、この瑕疵修補請求権を行使できると解する。
イ.またBは、商品の十分な生産ができないことによる営業上の「損害」の賠償請求権も有する。(634条2項前段)
なぜなら同規定は、請負契約が瑕疵なき仕事完成義務を内容とすることから債務不履行責任(415条)の特則であり、「損害」には履行利益まで含まれると解される。
そして、本問Bの営業上の損害は、本件機械に瑕疵がなければ生じなかったといえ、履行利益にあたるからである。
ウ.とすると、これらの請求権と、AのBに対する請負代金債権は、同時履行の関係にある。(634条2項後段・533条)
(3)ア.そこで連帯保証人Cは、主債務者Bの同時履行の抗弁権を援用し、Aに対して主張できないか。457条2項は「相殺」を対抗できるとしているが、同時履行の抗弁権については明らかでなく問題となる。
イ.そもそも同規定の趣旨は、主債務に附従する保証債務を負う者に、主債務者の有する相殺権の援用を認めないと、求償の循環が生じ迂遠である点にある。
そして、主債務者の同時履行の抗弁権についても、保証人にその援用を認めないと、求償の循環が生じる。
よって、保証人は、主債務者の同時履行の抗弁権も援用できると解すべきである。(457条2項類推)
ウ.本問でも、連帯保証人Cは、主債務者Bの同時履行の抗弁権を援用し、Aに対して主張できる。
エ.その範囲は、請負代金全額と考える。なぜなら、それが公平であるし、Cが全額について履行を拒むことにつき、信義則(1条2項)に反する特段の事情もないからである。
2.次にCは、主債務者Bの、前記損害賠償請求権とAの請負代金債権の相殺権を援用し、これをAに主張できる。(457条2項)
この点、前述のように同時履行の抗弁権が付着していることから、「債務の性質がそれを許さないとき」(505条但書)にあたるとも思える。
しかし、代金減額請求権的な性格を有し、現実に履行させる必要はないから、これにあたらないと解する。
3.(1) なおBは、前述のような不具合があったのでは本件機械を導入する意味がないと考えている。
しかし、修理が可能である以上、客観的に「契約をした目的が達成できない」とはいえず、解除権(635条)は有しない。
(2) また、同条も債務不履行責任の特則と解され、債務不履行解除(541条・543条)の規定の適用は排除される。
第2.小問2
1.AD間に契約関係はない。
そこでDは、Aに対し、修理代金分の不当利得返還請求(703条・704条)ができないか。
2.(1) まずAは、Bから請負代金全額の支払を受けているから、修理代金分の「利益」があると考えられる。
(2) またDは、Bが行方不明となり修理代金を回収できないという「損失」を負っている。
(3) そして、Bは本件機械に瑕疵があり、前述と同様に修補請求・支払拒絶できるのにAに請負代金全額を支払ったため、営業不振に陥り無資力となっており、その結果Dは上記「損失」を負っている。
よって、上記「利益」と「損失」の間に社会通念上の因果関係もあると考える。
(4) さらに、「法律上の原因」もないと考える。
なぜなら、本件機械の瑕疵につき帰責性あるAは、Bから修補請求・支払拒絶されるはずなのに代金全額を受け取っている一方、Dは、Aが修理しようとしないためやむをえずBが修理を頼んだ者であり、実質的公平に反するからである。
3.よって、前記請求ができる。
以上
1.(1) Cとしては、Aからの保証債務の履行請求を拒みたいところである。
しかし、連帯保証人であるCには、催告(452条)・検索(453条)の抗弁権がない(454条)から、同請求に応じなければならないのが原則である。(446条1項)
(2)ア.ただ、まず主債務者Bは、Aとの請負契約(632条)では1時間当たり5000個程度の商品生産能力があるとされていたのに、実際には1時間当たり2000個程度の商品生産能力しかないという工場用機械の「瑕疵」修補請求権を有する。(634条1項)
なぜなら、工場用機械の商品生産能力の「瑕疵」は「重要」といえるし、修理が可能である以上、「その修補に過分の費用を要する」わけでもないと考えられるからである。(但書)
ただし、Bは「相当の期間を定め」ず、直ちに本件機械の修補を求めているから、相当の期間経過後に、この瑕疵修補請求権を行使できると解する。
イ.またBは、商品の十分な生産ができないことによる営業上の「損害」の賠償請求権も有する。(634条2項前段)
なぜなら同規定は、請負契約が瑕疵なき仕事完成義務を内容とすることから債務不履行責任(415条)の特則であり、「損害」には履行利益まで含まれると解される。
そして、本問Bの営業上の損害は、本件機械に瑕疵がなければ生じなかったといえ、履行利益にあたるからである。
ウ.とすると、これらの請求権と、AのBに対する請負代金債権は、同時履行の関係にある。(634条2項後段・533条)
(3)ア.そこで連帯保証人Cは、主債務者Bの同時履行の抗弁権を援用し、Aに対して主張できないか。457条2項は「相殺」を対抗できるとしているが、同時履行の抗弁権については明らかでなく問題となる。
イ.そもそも同規定の趣旨は、主債務に附従する保証債務を負う者に、主債務者の有する相殺権の援用を認めないと、求償の循環が生じ迂遠である点にある。
そして、主債務者の同時履行の抗弁権についても、保証人にその援用を認めないと、求償の循環が生じる。
よって、保証人は、主債務者の同時履行の抗弁権も援用できると解すべきである。(457条2項類推)
ウ.本問でも、連帯保証人Cは、主債務者Bの同時履行の抗弁権を援用し、Aに対して主張できる。
エ.その範囲は、請負代金全額と考える。なぜなら、それが公平であるし、Cが全額について履行を拒むことにつき、信義則(1条2項)に反する特段の事情もないからである。
2.次にCは、主債務者Bの、前記損害賠償請求権とAの請負代金債権の相殺権を援用し、これをAに主張できる。(457条2項)
この点、前述のように同時履行の抗弁権が付着していることから、「債務の性質がそれを許さないとき」(505条但書)にあたるとも思える。
しかし、代金減額請求権的な性格を有し、現実に履行させる必要はないから、これにあたらないと解する。
3.(1) なおBは、前述のような不具合があったのでは本件機械を導入する意味がないと考えている。
しかし、修理が可能である以上、客観的に「契約をした目的が達成できない」とはいえず、解除権(635条)は有しない。
(2) また、同条も債務不履行責任の特則と解され、債務不履行解除(541条・543条)の規定の適用は排除される。
第2.小問2
1.AD間に契約関係はない。
そこでDは、Aに対し、修理代金分の不当利得返還請求(703条・704条)ができないか。
2.(1) まずAは、Bから請負代金全額の支払を受けているから、修理代金分の「利益」があると考えられる。
(2) またDは、Bが行方不明となり修理代金を回収できないという「損失」を負っている。
(3) そして、Bは本件機械に瑕疵があり、前述と同様に修補請求・支払拒絶できるのにAに請負代金全額を支払ったため、営業不振に陥り無資力となっており、その結果Dは上記「損失」を負っている。
よって、上記「利益」と「損失」の間に社会通念上の因果関係もあると考える。
(4) さらに、「法律上の原因」もないと考える。
なぜなら、本件機械の瑕疵につき帰責性あるAは、Bから修補請求・支払拒絶されるはずなのに代金全額を受け取っている一方、Dは、Aが修理しようとしないためやむをえずBが修理を頼んだ者であり、実質的公平に反するからである。
3.よって、前記請求ができる。
以上