Ⅰ EはAの抵当権設定登記を抹消することで、自己の抵当権設定登記の順位を上げ、甲不動産について把握する交換価値を増加させたいところである。
その根拠として、抵当権に基づく物権的登記抹消請求権が考えられる。これについては明文ないが、①自己の抵当権②相手方の抵当権消滅を要件に、目的物の交換価値支配を全うさせるため当然に認められていると解する。
Ⅱ 本問では①は明らかだが、②についてEはAの債権が時効消滅(167条1項)した結果、これに附従する抵当権(369条1項)も消滅していると主張することが考えられる。
1.これに対しAはまず、「当事者」ではないEは時効を援用できない(145条)と反論することが考えられる。
2.(1)ここで時効の援用権者を「当事者」に限定した趣旨は、時効利益を受けることを潔しとしない者の利益を保護する点にある。
とすれば、「当事者」とは時効により直接利益を受ける者に限定され、反射的利益を受けるにすぎない者は含まれないと解すべきである。
(2)本問で時効により直接利益を受けるのは、Aに対し債務を負担するBとその債務を物上保証するCであり、その結果反射的に抵当権順位上昇の利益を受けるにすぎないEは「当事者」に含まれない。
(3)よって、Aの反論が認められる。
また、前述のように時効援用権は一身専属的なものだから、EはCのそれを代位行使することもできない。(423条1項但書)
3.したがって、Eは②についての前記主張をすることはできず、Aに対する抵当権登記抹消請求は認められない。
Ⅲ またAは、物上保証人Cが債務を承認している(147条1項3号)から時効は中断していると反論することも考えられる。
1.しかし物上保証人はあくまで物上の責任のみ負い債務は負わないので、これを承認することはできない。
ただ、CがBの残債務を代わって弁済する旨繰り返し申し出た意思を合理的に解釈すると、併存的債務引受がなされたと考えられる。
これにより、CはBの債務とは別個独立の不真正連帯債務を負うので、これについて承認がなされ、時効が中断されたといえる。
2.これに対しEは、かかる併存的債務引受は詐害行為だとして債権者取消権(424条)を行使し、Eとの関係で併存的債務引受の効力を相対的に取り消す旨主張することが考えられる。
これは(a)併存的債務引受前にEのCに対する債権成立(b)Cの無資力(c)C・Aの害意を要件に認められるが、弁済は債務を減少もさせるので、CA間の通謀等がなければ(c)は認められない。
3.とはいえ結局、Eは前述と同様にAのCに対する債権の消滅時効援用権を行使できないので、Eの請求は認められない。
以上
その根拠として、抵当権に基づく物権的登記抹消請求権が考えられる。これについては明文ないが、①自己の抵当権②相手方の抵当権消滅を要件に、目的物の交換価値支配を全うさせるため当然に認められていると解する。
Ⅱ 本問では①は明らかだが、②についてEはAの債権が時効消滅(167条1項)した結果、これに附従する抵当権(369条1項)も消滅していると主張することが考えられる。
1.これに対しAはまず、「当事者」ではないEは時効を援用できない(145条)と反論することが考えられる。
2.(1)ここで時効の援用権者を「当事者」に限定した趣旨は、時効利益を受けることを潔しとしない者の利益を保護する点にある。
とすれば、「当事者」とは時効により直接利益を受ける者に限定され、反射的利益を受けるにすぎない者は含まれないと解すべきである。
(2)本問で時効により直接利益を受けるのは、Aに対し債務を負担するBとその債務を物上保証するCであり、その結果反射的に抵当権順位上昇の利益を受けるにすぎないEは「当事者」に含まれない。
(3)よって、Aの反論が認められる。
また、前述のように時効援用権は一身専属的なものだから、EはCのそれを代位行使することもできない。(423条1項但書)
3.したがって、Eは②についての前記主張をすることはできず、Aに対する抵当権登記抹消請求は認められない。
Ⅲ またAは、物上保証人Cが債務を承認している(147条1項3号)から時効は中断していると反論することも考えられる。
1.しかし物上保証人はあくまで物上の責任のみ負い債務は負わないので、これを承認することはできない。
ただ、CがBの残債務を代わって弁済する旨繰り返し申し出た意思を合理的に解釈すると、併存的債務引受がなされたと考えられる。
これにより、CはBの債務とは別個独立の不真正連帯債務を負うので、これについて承認がなされ、時効が中断されたといえる。
2.これに対しEは、かかる併存的債務引受は詐害行為だとして債権者取消権(424条)を行使し、Eとの関係で併存的債務引受の効力を相対的に取り消す旨主張することが考えられる。
これは(a)併存的債務引受前にEのCに対する債権成立(b)Cの無資力(c)C・Aの害意を要件に認められるが、弁済は債務を減少もさせるので、CA間の通謀等がなければ(c)は認められない。
3.とはいえ結局、Eは前述と同様にAのCに対する債権の消滅時効援用権を行使できないので、Eの請求は認められない。
以上