私は正義感が異様に強い。

父にほぼ似た。

父は「隣の客が後から来たのに、こっちのカツ丼が遅い!」と言って、席を立って、金を払って帰る。

料亭で「海老の塩焼きの皿が小さい!」で金を払って帰る。


この金を払うのが尊敬できるところで、

あとはイチャモンだけど。


PTA会長でもそう。

保護者、先生、議員関係なく、ズバッと言う。


落語家になってから

それだけが正義ではないという事を学んでだいぶマシになったけど。


そんな私が肝臓移植で1級障害者になって

元気過ぎる人間というトラップに引っかからず

ヘルプマークに気付いて「何か手伝える事があれば?」というCAさんや、素敵な方々が声をかけてくれるやようになって、日本という優しい国に感謝し、

元気過ぎる私自身、

小っ恥ずかしい思いでヘルプマークをたまに隠したりしていたが、昨日はあの正義感が丸出しになった。

電車の優先席、

大股開きのおじいちゃんがでっかいスーツケースを

隣の空いた座席前に陣取っている。

結構人が立っているのに、この所業。

許さん。

「すみません、座らせていただいても良いですか?!」

どかない。

しょうがない、障害者と言おう。

「すみません、荷物どかしますね。」

ヘルプマークを見せながら座る。と、

爺「お前、コート踏んでる。」

あ「すみません。」

爺「俺はマスクつけてないぞ!コロナうつるぞ!」

あ「ああ、大丈夫です。私コロナ持ってるんで。」

爺「ああ、そうか持ってるのか。」

私が民生委員になれと言われてる所以。

こういう拗らせおじいちゃんと話すのは好き。

爺「お前の持ってるビトンは偽物だろ!」

ああ、話の通ずる方では無かった。

爺「質屋で買ったんだろ!」


ああ、要らない正義感で余計な事をしてしまった。

お爺さんがヒートアップし出した。

前に立っていた方が、

「差し出がましいとは思いますが、、、」

とお爺ちゃんを諭す。


いや、申し訳ない。


お爺ちゃんは優先席の手すりの棒が邪魔だと叫ぶ。

その後

別の方が「大声を出すなら鉄道警察へ行け。」と

爺ちゃん「おー行ってやろうじゃねぇか。」

と出ていく。


しばし通過待ちのホーム。

爺ちゃんが誰かに電話をして

「ああ俺は見たんだ。痴漢だよ。女子高校生を触ってた!」

と大声で誰もがわかるホラを吹いている。

そしてお爺ちゃんは特急に乗り換えても

満員の電車内で通話を続けて発車して行った。


うーん。

誰も幸せにならなかった。

正義感は要らなかったのだろうか。


私は恨まれて自分が刺されても

優しい日本にしたい。


やっぱり政治家が向いてる。