夏のおわりに |   .

たしかに1年半ほど前、僕は中国に行った。



季節が通り行くのは早いもので


あのときの悲しみなどは全て


温かい思い出となっていた。



別れの辛さというものは


別れを重ねるごとに感じなくなるものだと言われているけど


僕の場合は違った。



就職を控えている僕にとって


今回の別れは遠い別れを意味していたからだった。






上海に着いた僕は、言われていた通りにバスの切符を買い、


言われたとおりのバス停で降りた。


言われていた通りにタクシーに乗り、


言われたとおりの場所へ連れて行ってもらった。



バスが遅れて1時間も待たされていた彼女のうしろから、


 「そうちゃん!」


1年半前と同じように、そう呼びかけた。


彼女はうれしそうに僕の名前を呼び、


 「おかえり!」


と迎えてくれた。


僕は胸が痛くて痒くてしかたなかった。


再会の喜びではなく、


1週間後の再離がたまらなく悲しかったからだ。


きっと日本へ帰るときには、


一週間分の思い出を背負って飛行機に乗るのだろう、


そう思いながら彼女と再会した。