
手術後の経過も良好ですっかり元気になったフェアリ。
最後まで悩んだがやはり手術をすることを選んで良かったのだと思う。
陽が暮れるとすっかり寒くなった大阪の空の下、
久しぶりに長距離の散歩にでた。
人通りの多い街中を彼女達と歩けばとにかく目立つ。
犬種の名前から、下の子の足の件、兄弟?親子?夫婦?など、毎回同じ質問ばかりで飽き飽きするが、大阪のど真ん中でボルゾイ二頭だもの仕方あるまい。
声を掛けられるのはウンザリなものの、街行く人々とすれ違うと、珍しいボルゾイのお嬢様達の気ままなお散歩の姿に、気難しい顔で家路を急ぐ人さえ、ふと口元を綻ばせるのをよく見かける。
私はその様子を見るのが好きだ。
愛嬌が人の心を和らげる。
「貴女たちは偉大な力を持ってるのね」
いつもそう思う。
その素晴らしい力にどれだけ癒された事か...
彼女達が決して言葉で何か語る事はない。
でも、時に言葉が誤摩化しの道具になる人間同士よりも、ダイレクトに通じ合える。
素直な心や態度、伝える事の一生懸命さや、相手を見つめる眼差しの意義を幾度となく教えられるものだ。
「帰ってご飯にしようか」
そう言うと二人は家に向かって足取りを早めた。
どこからか金木犀の香りがした。
今宵はとても穏やかだ。