「どこ行きますか?」
ハンドルを握りながら、リョータ君が尋ねた。
「どこでもいいわ。リョータ君にお任せします」
私は窓の外を眺めながら素早く答えた。
だって別に行きたい所なんてないもの。
それに今の私は行き先を考える余裕なんて持ち合わせていない。
仕事と慣れることない怜さんとの奇妙な生活の日々。
確かに怜さんは仕事上、すれ違いばかりなんだけど・・・・・・。
それでも私がひどく疲れてるのは事実。
身も心も悲鳴を上げていた。
「了解です!では・・・」
そんな私の気持ちを払拭するかのように、リョータ君が明るく答えた。
と同時に、車が交差点に差しかかった途端、突然リョータ君がハンドルをきり、車は大きく進行方向を変えた。
一体どこへ連れてってくれるのかしら?
ふと窓の外を見ると、私の目の前には見慣れない風景が流れ始めていた。
明らかにマンションとは違う方向に向かっている。
何処に向かっているのかは見当もつかないけど、目的地が分からないというスリルに、私の心は大きく騒ぎ出していた。