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「奥様、ご苦労様です」


仕事が終わると、いつもこうして迎えに来てくれるリョータ君。


この日もリョータ君は、車に乗り込もうとする私に向かって丁寧に頭を下げる。


いくらボディーガードといえ、これはあまりにやり過ぎかも?


いつもそんな疑問が私の中にあった。


「いいよリョータ君。そんな風に気を遣わなくっても」


「でも、社長の奥様ですし・・・」


「本当にいいの。私は全然構わないから!」


私の申し出に、リョータ君は少し困った表情を浮かべた。本当に気なんか遣わないでほしい。


偽物の私なんかに・・・。


だって怜さんと私は本当の夫婦なんかじゃない。


リョータ君はそのことを知らないけど、私は「奥様」の一言で、いつもかなり心にダメージを受けている。


自分勝手なのは承知の上だけど、そのことで苦しんでいることも確かで・・・。


相反する思いが、ひどく私を混乱させるばかり───