「どうぞ座って」


怜さんが自分の前のソファーに手招きしながら言った。


急に現実へと引き戻されてしまった私は、恐る恐る怜さんの前に進み出た。


ぎこちなくソファーに座る私。


そんな私に怜さんは優しく語りかけた。


「話と言うのはね」


そう切り出した時の怜さんの顔が妙に真剣で。


思わず私はゴクリと生唾を飲み込んだ。



今日会社で、偽装結婚でも私は嬉しいんだって気づいたばかりなのに。


早くも解消!?


私の頭の中で、勝手な妄想が走り出していた。


「アヤ姫?」


目をぎゅっと固く閉じた私を、不思議に思ったのか、怜さんが驚いたように言った。


緊張が走る中、ゆっくりと目をあける私。


怜さんの優しい視線が私を捉える。


それだけで私の心臓は爆発寸前。


そんな中、怜さんがゆっくりと話始めた。


「実は今日ね、俺店を引退するんだ」


えっ!引退!?


怜さんの驚きのセリフに、私は思わず怜さんの顔を二度見してしまった。


予想すらしていなかったセリフ。


別れ話じゃなかったからって、安心できないよ!!


「えっ、それってやっぱ結婚が影響して・・・??」


「そうじゃない。俺が前から決めてたことを、実行に移す時がきたんだ」


動揺する私に対し、怜さんはどこまでも冷静な姿勢を崩さない。


だからって、私の動揺がすぐに納まる訳なくて・・・。


「でも・・・」


ひょっとして私のせい?


私と結婚するから引退に追い込まれちゃったの?


責任を感じるものの、私はどうしていいか分からず、ただ怜さんを見つめ返すだけ。


一体どうすればいいの?