今夜はこれからどうすればいいの・・・・?


偽装結婚とはいえ、今夜は初夜。


てことは・・・・?


まさか!?


それを忠実に実行に移さないといけないなんてことないよね?


勝手な妄想に、一人妙にソワソワし始める私。


落ち着け、落ち着け!!


先程までだらりと伸ばしていた足を素早く戻し、姿勢を正すよう座り直した。

そんな私の微妙な変化に気づいたのか、「じゃあそろそろ寝ようか」と、怜さんがポツリと言った。


その一言で、先程までの睡魔が、一瞬のうちに消え去った。


「・・・はい・・・」


返事をしたものの、身体は動かなくて。


ソファーに座ったまま、一歩も踏み出せずにいた。


すると怜さんが、「今夜は俺の部屋に来る?」と、甘く誘いかけるように呟いた。


私と怜さんの寝室は別々。


怜さんの事を好きな私には、ちょっぴり淋し選択でもあった。


でも、愛もないのにベッドを共有するほど私には度胸などなくて。


当然の選択ではあったんだけど・・・。


なのに、目の前で怜さんは私を誘ってる?


これってどういうこと?


その誘いを拒否する権利は私にあるの?


私はドギマギと目を泳がせながら、怜さんを見つめた。偽装結婚の条件には、こういう意味も含まれていたの?


今日怜さんと誓いのキスをした唇が、熱を帯びた様に熱い。


私が動こうとしないのにうんざりしたのか、怜さんが私の方に近寄って来た。


そのことが私を一層驚かせ、身体をビクつかせた。


それがどう怜さんの目に映ったのかは知らないが、怜さんは大きな声で笑い始めた。


・・・・・・?


笑っている怜さんを、きょとんとした顔で見つめるだけの私。


一瞬何が起こったのか、理解できない。私が困っているのに気付いたのか、「冗談、冗談!そのために寝室は別にしたんだからね」と笑いを堪えながら怜さんは言った。


それを聞いた私は、ほっとしたのも束の間、またまた怜さんの口からとんでもない発言が飛び出して。


「寝るのも一緒って言うのは、条件的には無効だから。でも、アヤ姫のご要望とあらば、いつでもこの東條怜、姫のお部屋に参上するけど!」


「そんなの、結構です!」


頬を赤らめながら、すっと立ち上がる私。


真顔で言う怜さんにどう対処したらいいか分からず、恥ずかしさだけが募っていく。


これ以上居たたまれなくなった私は、逃げるようにその場を立ち去った。


すると、「おやすみアヤ姫、愛してるよ!」と、怜さんの声が後ろから聞こえた。


もう、怜さんてばっ。


こんな時に変な冗談はやめてよね。


赤い顔のまま部屋のドアを閉め、ベッドに横たわる。


まだ怜さんの声が耳に残って、ドキドキが止まらない。


二人別々の寝室。


それぞれの夜は、静かに更けていく。