──翌朝──
今朝はやけに肩が重い気がする。
自宅の玄関に向かいながら、私は首を右に左にと動かしてみた。
「コキコキ」と小さな音がした。
ここ数週間の間、普段とは明らかに違う生活が続いていた。
その生活疲れとでもいうのだろうか、私の身体は正直だ。
肩凝りが酷い。
以前の平凡な日々がここまで一変してしまうとは、一体誰が想像できただろう。
まして今やボディーガードまでついている御身分なのだから、ホントわかんないよね。
おまけに、挙式という一大イベントがすぐそこまで迫ってきている。
その日を境に、今まで以上に現実とかけ離れた生活になること間違いない。
私はそのギャップに耐えることができるのだろうか。
「好き」と告白してはいけない怜さんとの生活。
不安に感じながらも、今更変えることのできない現状。
そんなこと、この私が一番よく知っている。
朝から思いを巡らせながら、身支度を整えると、私は玄関のドアを開けた。
すると──
「おはようございます」
ドアを開けた途端、元気に挨拶するリョータ君の姿に私は驚いた。
大きく目を見開いて立ち尽くしている私に、
「社長命令です。奥様をお守りするのが俺の役目ですから」
と、神妙な面持ちのリョータ君が言った。
お、奥様って・・・・。
今度はリョータ君のセリフに驚かされる私。
更に目を見開き、「奥様って・・・・?」と聞き返す。
「・・・はい、・・・何か俺・・・えっと・・・」
するとリョータ君は、口ごもりながら、困ったように顔をしかめた。
確かに私はもうすぐ怜さんの奥さんになる訳で。
たとえこれが偽装結婚だとしても、その事実は変わらない。
だからリョータ君は何一つ間違った事は言ってはいないんだ。
「あっ、ごめん!何でもないの、気にしないで」
私は慌てて否定すると、すばやく車に乗り込んだ。
朝から動揺して冷や汗まで出る始末。
以前の静かな朝は何処へ行ってしまったの?って聞きたいくらい。
「今日はありがとう。朝早くからごめんね」
ようやく落ち着いた私は、気を取り直しリョータ君にお礼を言ってみた。
「いえ、仕事ですから」
きっぱりとしたリョータ君の返事。
どうやら彼には私の動揺は伝わっていないらしい。