「ありがとうございました」
混乱状態のまま礼を言い、車を降りると私は、そのまま自宅へ向かって歩き出した。
頭にはまだ怜さんの手の感触が残ったまま。
結局何だったんだろう?と首をかしげた。
怜さんとの会話を思い返してみた。
けど、怜さんの嬉しそうな顔しか思い出せなくて。
今日何度目かのため息を吐きながら、ドアノブに手を置くと、後ろで怜さんの車の走り去る音が聞こえた。
*******
次の日の朝、昨日のモヤモヤを抱えたまま会社に行こうと玄関を出ると、怜さんの車が少し離れた場所に停まっているのが目に入ってきた。
私を迎えにきてくれたの?
ニヤけた顔を慌てて元に戻しながら遠慮がちに車に近づくと、後部座席の窓から、「おはよう」と、ほろ酔い加減の怜さんが顔を出した。
「おはようございます」
「会社まで送るよ。乗って」
怜さんはそう言うと、ドアを開けてくれた。
「おはようございます」
車に乗り込んだ私に、運転席から戸志呂さんが声をかけてくれた。
「おはようございます」
挨拶を返した私は、助手席にもう一人、見知らぬ青年が乗っていることに気づいた。
誰かしら?
後ろからなので、顔は見えなかったが、服装からして私よりも歳は若そう?
一体誰なんだろう?
そう思いながら助手席を見つめる私に、「先ずは~、彼の説明からねぇ~~~」
と、仕事を終えたばかりの上機嫌の怜さん。
テンション高めで彼の紹介を始めた。
「いい?彼の名前はリョータ。今日からアヤ姫のボディーガードをしてもらっちゃいまーす」
私のボディーガード?
そんな人つける必要なんてある?
目を丸くしている私に、リョータと名乗る青年が後ろを振り向き、身を乗り出すと、挨拶を始めた。
「リョータです。よろしくお願いしま~~~す」
その口調はとても軽いものだった。
きらっと見せる笑顔は、はっと気を引くものがあったけど・・・・・。
なんて思いながら、「は、初めましてアヤです」と、私も慌てて挨拶を返す。
けど、一方では納得なんていく訳なくて。
私は隣にいる思わず怜さんを軽く睨みつけた。
すると怜さんは笑いながら、いつものように私の頭に手を伸ばしてきた。
「俺は決めたんだ!アヤ姫を守るって。だから警護を固める事にしました~!!」
左手で私の頭を撫でながら、右手で拳を作ると、それを高く振り上げた。
隣で怜さんは興奮しながら息巻いている。
はぁぁぁ~~~~。
私は頭を撫で続けられながら、今日最初のため息をついていた。