「もう、本当に聞いてびっくりしましたよ。アヤちゃんと紫苑がいつの間にって感じで。だってアヤちゃんあの店初めてだって言ってたでしょ。ってことは、紫苑の一目惚れってことですか?ふふふっ」
「私もね、チカちゃんから今朝この話を聞いたの。いいなー、なんか運命感じちゃうわね。アヤちゃんが羨ましいー!!」
ジリジリと私に詰め寄りながら、顔を真っ赤にしたチカちゃんと佐久間さんが興奮気味に言った。
私を見つめる二人の目は、まるで羨望の眼差しだ。
確かに話だけ聞けば、羨ましい話になるんだけど。でも私の場合は・・・・。
息苦しいほどに、心臓がドクドクと音をたて飛び跳ねていた。
手には緊張からか、汗が薄ら滲んでいた。
今朝怜さんが言っていたのはこの事だったんだと改めて気付かされた私。
でも、事が事だけに頭が上手く回らず、思考が混乱するばかり。
二人の鋭い視線に挟まれ、私はこの場から一歩も逃げることもできない。
「いいなー、私にもそういう人現れないかしら・・・」
佐久間さんが羨ましそうに話しかける。
でも、私は一言も言い返すこともできない。
確かに二人の言っていることは事実。
でもそれは半分だけ。残りの半分は嘘なのだから。
だからと言って、「これは本当は偽装結婚なの」なんてこと、言える訳がない。
二人の熱い視線に見つめられ、ますます私の心は複雑になっていくばかり。
けど、そんな私の思いとは裏腹に、二人は祝福ムード一色。
私の目の前で、異常な盛り上がりを見せていた。
「ねえ、と、とりあえず仕事をしましょう。ねっ、仕事!」
何とかこの話題から逃げたくて、私はそう言ってみた。
「おっと、そうよね、お仕事、お仕事!」
「じゃあこの続きは、お昼休みに!!」
ドキッ!
私はすぐにやってくる昼休みに、今から怯えていた。