「どうかなさいましたか?」
私が眉間にしわを寄せながら考え込んでいるのが、ミラー越しに見えたのだろう。
戸志呂さんが心配そうに声を掛けてくれた。
思わずミラー越しに目が合うと、「大丈夫です」と笑顔で答える私。
けれど、無理して笑ったためか、その笑顔は引きつり笑いの形相になってしまい、私は慌てて顔を逸らした。
そう言えば、戸志呂さんと一緒に出勤って言うのはどうなの?
これって問題じゃない?
私の中で、新たな問題が浮上してきた。
ど、どうしよう・・・・。
「あのぉ~、すみませんが会社の前ではなく、少し離れたところで降ろしてもらってもいいですか?」
「ええ、構いませんが?」
申し訳なさそうに頼み込む私に対し、どこか笑いを押し殺したような態度の戸志呂さん。
ここって笑う所じゃないですけど?
気のせい・・・かな?そうこうしている内に、車が会社の近くで停車した。
戸志呂さんが私の申し出通り、人目につかない場所で車を停めてくれた。
流石は戸志呂さん。
配慮が行き届いている。
「いってらっしゃいませ」
「どうもありがとうございました」
戸志呂さんにお礼を言うと、私は緊張した面持ちで会社に向かって歩き出した。
しかしその僅か数分後。
この緊張をも吹き飛ばす出来事が我が身に降りかかるとは。
この時の私は知る由もなかった。