「さあ疲れただろ。もう休んだほうがいい。この話はこれで終わりだ」


そう言うと怜さんは、優しく私をベッドに横たわらせ、布団をかけてくれた。


間近に怜さんの顔を見た私ははっと息をのんだ。


薄らと目が赤い──


怜さん・・・・。


私に悪いと思ってるから?


そこまで私のことを?


ひょっとしたら、ただの思い過ごしかもしれない。


けど──


勝手な自分の解釈で、私は思わず胸がぎゅーっと締め付けられた。


「じゃあ俺は今から店に行くけど、何かあったらこれに電話して」


怜さんはポケットから携帯電話を取り出して見せた。




あっ、携帯!!


まだショップに置いたまんま!


「あのっ、私電話しないと」


バイト先もそうだけど、家にも連絡しておかないと。


きっと今頃両親は心配していることだろう。


「家にだったらもう電話したよ。お義母さんが出て、アヤをよろしくって言われた。バイト先なら俺から電話しておく。それってどこのコンビニ?」


すぐに連絡先を告げると、怜さんは早速電話をかけ始めた。


そんな怜さんの姿を見つめながら、ぼんやりと考え込む私。


怜さんはお母さんになんて言ったのかな?


怜さんのことだから、二人に心配かけるようなことは言わないだろうけど。



*  *  *


朝になった。


怜さんのおかげで、何もかも忘れるかのようにぐっすり眠った。


だからかな、昨日の恐怖も薄らいだ気がする。


怜さんの残り香のあるベッドから起き上がる。


一晩中この香りに包まれていたせいか、まるで怜さんに抱かれているような錯覚に落ちいっていた。


時計を見ると出勤時間が迫っている。


私は乱れた髪を直し衣服を整えているところへ、仕事を終えた怜さんが帰ってきた。


「元気になった?」


寝室のドアが勢いよく開けられ、アルコールの匂いをぷんぷんさせ、幾分軽い口調の怜さんが尋ねた。


「昨日はありがとうございました。おかげですっかり良くなりました」


明るく答える私。


そんな私を見て、怜さんはドアに寄りかかりながらにっこり笑った。


ふらついた足取りで、私に歩み寄る怜さん。


怜さん昨夜もたくさんお酒飲んだのかな?


仕事上仕方ない事だけど、身体が心配だわ。


「そう、それは良かった!良かった!」


そんな私の心配をよそに、怜さんはうれしそうに笑いながら私の頭を数回撫でた。