「ここはね、俺が一人になった時暮らしていたボロアパート」
怜さんは目の前の古びた建物を指さして言った。
私たちは車から降りると、建物に近づいて行った。
「あそこ、あれが俺の部屋だった」
そう指で示しながら、説明を始める怜さん。
へー、そうだったんだぁ~と感心しながら建物を見つめる私。
今の怜さんからは想像もできないような古いアパート。
その建物に、怜さんが一人で生きてきたことの苦労が垣間見えた。
「なんか急にここへ来たくなったんだよね。もちろん、アヤ姫に謝りたかったっていうのもあったんだけど」
私の横で建物を見上げながら、怜さんは懐かしそうに一人感傷に浸っていた。
そしてその視線を私に移すと、照れ臭そうに微笑んだ。
「あのさぁ~、これ後で渡そうって思ってたんだけど、今ここでいいかなぁ?」
そう言って怜さんが差し出したのは、先日選んだ指輪だった。
私が驚いて固まっていると、
「そんなに緊張しなくてもいいよ」
と言って、怜さんは私の肩を揺らしながら笑った。
「す、すみません」
恥ずかしさと緊張で、私の動きはどうしてもぎこちなくなってしまう。