きっとこの店員さんの目には、私たちって幸せそうなカップルに映っているんだろうな。
でも、本当は・・・・。
そんなことをふと思いながら、私は指輪を見つめた。
「じゃあ、これにします」
そんな思いを遮るように、紫苑さんが店員に言った。
「ありがとうございます」
笑みを浮かべ、店員は指輪を持つと、いそいそと店の奥へ消えて行った。
その時私はかなり緊張していた。
だって、さっき指輪の値札がちらっと見えた時、「0」の数が一つ多かったように思えたから。
うそっ、仮の婚約指輪にしてはちょっとお高かすぎない?
ひょっとして紫苑さんは金額を知らないのかも?
私は紫苑さんに遠慮がちに尋ねた。
「あの、紫苑さん。さっきの指輪、凄くお高いみたいですよ。本当にいいんですか?」
すると紫苑さんは、ふふっと意味ありげに笑い、
「もちろん!アヤ姫が気に入ったものならどんなものでもOKですよ」
と、私に優しい視線を注いだ。
こんな風なセリフを言われたのが初めての私。
歯の浮くようなセリフも実際言われてみると妙に嬉しかったりする。
おかしいような困ったような、複雑に感情が入り混じった表情を浮かべながら下を向く私。
まだスタートしたばかりだというのに、この分じゃ先が思いやられるなと実感していた。