私は今、戸志呂さんが運転する車の中にいた。
緊張の連続から解き放たれた脱力感。
全身の力がスーッと抜け落ちていた。
反面、今は大役を無事果たせた思いから、達成感に酔いしれていた。
車に揺られながら、この話を一刻も早く父と母に伝え、一緒に喜びを分かち合いたいと思っていた。
窓の外を見ながら、思いは高まるばかり。
そんな中、ようやく車は家の前に到着した。
私は戸志呂さんに何度も何度もお礼を言い、彼の車を見送った。
車が見えなくなると、一目散に玄関に向かって走った。
玄関のドアを勢いよく開け、そのまま父と母の待つリビングへと走る。
ドタバタと勢いよく入って来た私に、困惑気味の父と母。
これから聞かされる話に、歓喜の声を上げることになろうとは、この時の二人は知る由もなかった。
* * * *
「とうとう朝がきたんだな・・・」
ぼそりとつぶやく父の低い声が、夜が明け始めたばかりのリビングに小さく響き渡る。
カーテンの隙間から差し込む光が、父の涙の跡のついた頬照らしている。
昨夜、紫苑さんの名前こそは出さなかったが、お金が借りれそうだということは真っ先に二人には話しておいた。
最初二人は半信半疑だった。
「彩矢、あなた危ないこと・・・」
「そんな上手い話など信じられん」
父と母はその一点張り。
「そんなことないよ。信じて、お母さん、お父さん」
毅然とした態度で説得を続けた。
母は私の様子を見て、安心したのか信じてくれた。
そして父も、涙ながらに熱弁を振るう私の話に、少しずつ耳を傾け、理解してくれた。
そして私たち家族は、手を取り合いながら泣いた。
この涙はもちろんうれし涙。
不幸のどん底から一転、父も母も初めて笑顔を見せてくれ、私自身も、心から笑うことができた瞬間だった。