ホストクラブの店内とは全く違う雰囲気に、ハッと息を飲む。

これからここで私は、一世一代の大仕事をやらなければならない。

もう後戻りはできない。

父と母の深く落ち込んだ顔が脳裏に浮かぶ。

これ以上、二人の顔を曇らせたくない。

ギュッと手で拳を作った。

「どうぞ」

部屋の奥のソファーに通された。

どうやらここで紫苑さん来るのを待つことになりそうだ。

ソファーに座りソワソワ落ち着かない私に、「もう暫くお待ちいただけますか?」と、戸志呂さんがお茶を運んできてくれた。

「どうもすみません」

深々と頭を下げる私。

私の用件を知ったら、お茶なんて出さなきゃ良かったって思われちゃうかも・・・・。

心の中でそう思った。戸志呂さんはその後デスクに向かい、モニターをチェックし始めた。

これが彼の仕事なのだろうか?

紫苑さんを社長って呼んでいたけど、ここが紫苑さんの事務所なの?

こんな時でも妄想は膨らむ。


・・・・・・・。


ソファーに座ってから、暫く時間が過ぎた。

再び緊張が私を襲う。

座っている私の足が、ガクガクと震え出す。

事務所には私と戸志呂さんの二人だけ。

シーンと静まり返る部屋の中で、戸志呂さんにそれを悟られないようにするのは至難の業だ。

両手で膝をギュッと押さえてみても、その手まで微かに震えている。