「きゃっ!!」


振り向きざま、私は思わず叫び声を上げてしまった。


「おいおい、キャーはないだろ?」


榊先生は苦笑しながら、尚も私に近づいてくる。


その行動は不可思議だ。


榊先生は本などもうどうでもいいといった感じで、真っ直ぐ私に向かっている。


そして、榊先生の手が私を捕えた。


すかさず片手で口を塞がれ、本棚に体を押しつけられる。


榊先生の顔は、先ほどまでの穏やかさは消え失せ、いつしか目を鋭く吊り上らせていた。


「なっ・・・んっ・・・」


口を塞がれ、声を出すことができない。


その上ここは地下の書庫。


いくら大声で叫んだとしても、誰にもその声は届くはずがない。


これから起こる事を想像するだけで、恐怖に身体がガタガタ震える。


そんな私を蔑み、あざ笑うかのように、榊先生は不気味に笑っている。


そんな中、先生のもう一方の手が、私の額に伸びてきた。


「相原~。おまえかわいい顔して、やること大胆だな~」


先生はそう言ってゆっくりと顔を近づけてきた。


何のこと、何をいっているの?


私は堪らず顔をそむけようとした。


しかし先生の手が、私の前髪を掴んでいるためそれを拒む。


怖くて先生の顔をまともに直視なんてできない。


今度は下を向こうとするが、それも先生の手で阻止された。


「ちゃんと俺の目を見ろよ、相原!!ふーーーん、これがあのいけすかねぇモデル坊やの好きな顔かぁ~!?」


まるで私を舐めるように見ている。


シリュウ?


先生の言葉は、明らかにシリュウに対し敵意が感じられた。


そしてその目は、もはや教師の目などではなく、怖がる生徒をただ面白がって楽しんでいる、変質者のようだった。


「おまえら、学校でキスなんてしてていいのか?あんっ、高校生のくせにいちゃつきやがって、毎日がそんなに楽しいのか?クククッ」


キス??


この間の屋上、こいつは見ていたんだ。


だから?


だからその制裁の為に私を?


不気味に奴の笑い声が書庫に響く。


しかしその目は決して笑ってなどいない。


むしろ、憎しみに燃えていると言った方が正確かもしれない。