「先生は何の本をお探しなんですか?」
「ああ確か、田中先生にここにあるって聞いたんだけど、古い数学者の本なんだ」
「数学系ですか・・・」
私はブツブツ独り言を唱えながら本棚の見取り図を見ていた。
「先生、数学系は結構まだまだ下の階みたいですよ」
「そうか?下かぁ・・・」
「良かったら私もお手伝いしましょうか?」
「悪いがそうしてもらえたら助かる。なんだかここは一人だと薄気味悪いしな」
へー、意外だな。
男のくせに、書庫が怖いだなんて。
榊先生とは今日初めてこんな風に話をしたけど、案外いい先生みたい。
外見だけでなく、内面的にも。
いきなり今日は先生の意外な一面が発見できたし、明日早速朋美に教えてあげよう。
そんなことを考えながら、私たちはどんどん階段を降りて行った。
先生じゃないけど、やっぱ不気味。
早く本を見つけて帰ろう、私はそう思っていた。
ようやく数学系の場所に着いた。
明かりをつけると、私たちは早速本を探し始めた。
本棚を隈なく探してみるものの、なかなか目的の本は見つからない。
「ないですねぇ~」
「そうだなぁ~」
お互い本棚と本棚の隙間を行ったり来たりしながら、首を縦横上下に動かす。
大体それらしい位置は分かるのだが、どうしても見つからない。
「先生、そっちはどうですか~?」
「うーーん、探してるんだけど、ないなぁ~」
先生の声が真後ろから聞こえたので、私はひどく驚いた。
パッと後ろを振り返ると、そこには本を探している筈の榊先生の姿が、すぐ間近に迫っていた。