「はい、どうぞ」
少年はそう言うと、持って来たグラスを置いた。
すでにタオルは頭には被っておらず、開いたままのシャツも、ちょうどの位置までボタンが留められていた。
ひょっとして、私の視線に気づいたのかな?
気まずさを感じつつ、ジュースをひと口飲んだ。
「ごちそうさまでした」
「疲れただろ?」
少年の口調は相変わらず優しい。
その声は、私の耳に凄く心地良かった。
「・・・・はい。まあ・・・・」
「だよな。日常と正反対の事がこれほど起きたんだ。調子狂うってぇーの」
そう言うと少年は屈託ない笑顔を見せた。
何てきれいな顔して笑うんだろう・・・・・。
思わずその顔に見とれてしまう。
少年は不思議な雰囲気を持っていた。
なんだろう、この感じ・・・・・。
はっきりとは言えないが、心の奥で感じ取れるような。
私自身、初めての感覚に少し戸惑っていた。
私この後どうなるんだろう?
おかわりのジュースも残り僅かになっていた。
少年は何も行動を起こすことなく、世間話をしながらソファーに座ったまま。
だんだん私も緊張がほぐれ、気を許し始めていた。
この分だと、私は解放されるよね。
命を狙われるなんて皆無だよね。
そう確信した私は「今日は本当にいろいろあったけど、おかげで助かりました。ありがとうございました」と、少年に頭を下げ、お礼を言った。
ここまで言っちゃえば、「じゃあ、さようなら」ってことになるよね。
少年の口からその言葉が出るのを待ちながら、私は残りのジュースを飲み干した。