「どうぞ」
少し緊張していた。いくら公平君の息子とは
いえ、若い高校生を家に入れるのに、抵抗が
なかったわけではない。でも、それ以上に公
平君の話を聞きたいという気持ちのほうが勝
っていたのだ。
「へぇー、なかなかいい生活してんだね」
「そんなことないよ。普通だよ」
「ねえ、理沙子って男いるの?」
「理沙子?なにそれいきなり呼び捨て?」
「いいだろ。だって理沙子さんなんて言いに
くいよ。舌かみそうでさ。だから理沙子って
呼ぶから。あっ、俺のことも潤でいいから」
なんなのこの子。公平君とはまるで違う。な
んか軽すぎない?
「あと、男ってなによ。そんなこと初対面の
君に言わなくちゃいけないこと?」
「悪い悪い。怒ったんなら機嫌直してよ」
「別に怒ってなんかいないけど」
でも、なんか調子狂う。しかし彼は、私が怒
ってないとわかると、ホッとしたように胸を
なでおろした。
「怒ってないことがわかったことろで、これ」
彼はかばんの中から一冊の古い本のようなも
のを取り出し、私の目の前にすっと差し出し
