「いやぁ、本当に今日は良い日になりました」
「本当ですね。もう翔子は結婚しないのかも
とあきらめていましたから・・・」
「でも僕は、直人が結婚するって言ってきた
とき、思い出したことがありましてね。確か
まだあいつが幼かった頃、「翔子さんと結婚
する」って騒いだことがありまして・・・。
あの時は、子供の言うことですし、それほど
深く考えてはいなかったんです。でも、今に
なって思えば、あの日からずっと直人は翔子
ちゃんと結婚するって決めていたように思う
んですよ」
「そう言えば、そんなことがありましたわ。
直人君、まだ保育園でしたっけ。うちに来る
なり、私に「翔子さんと結婚したい」って言
ってました」
「ははははっ、そうですか。直人は昔から、
こうと決めたら絶対にやりとおす子だったん
です。だからあの時の話も、今こうして現実
になったんじゃないのかなって思うんです」
「そうですか・・・。でも、うれしいですねぇ
そんなにずっと翔子のこと思っててくれてたな
んて・・・。あの子は本当に幸せ者です」
「ええ、それは直人も同じです。本当に仲良
かったですからねぇ、あの子たちは」
「翔子は父親を亡くして淋しかったでしょう
けど、直人君がいてくれてよかったんじゃな
いでしょうか」
「うちもそうですよ。翔子ちゃんがいたから
直人も随分助けられたようです」
「本当にこれからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願します」
二人の会話を聞きながら、私は自然と涙が零
れ落ちた。昔、私が知らないところで、直人
君はこんなにがんばってくれていたんだ。今
日、改めて彼の強さと、優しさを知ったような
気がして、思わず熱いものが込み上げてきた。