「さあ急いで翔子さん。時間だよ」


「はいはいわかってます」


直人君にせかされ、私は慌てていた。今日は実家に


帰る日だ。朝からその支度でばたばたしていた。


私は長い間実家に帰っていなかったので、本当に久


しぶりの帰省だった。お母さん突然帰ってきてびっ


くりするだろうな。そんなことを考えながら私は部


屋を出た。


「なんかドキドキするよ」


「なんだよ。たかが家に帰るくらいで」


確かに直人君の言うとおりだ。でも、そんな直人君と


気持ちが通じ合ってから一緒に帰るなんて、いつもと


違う感覚に本当にドキドキ胸が高鳴っていた。


バスの窓から懐かしい風景が見えてきた。何とも言え


ない気持ちがグッとこみ上げてきた。


「翔子さんは随分帰っていなかったから、このあたり


も変わってるだろ」


直人君の言うとおり、随分景色が変わっている。住み


慣れたところも、数年も離れているとこんな風に変わ


っていくのだ。


バスは時間通り到着し、私たちはバスから降りた。


「あっ、あれ恭平君?」


遠くで恭平君が手を振っているのが見える。


「おーい、今帰ったぞ」


直人君も手を振りかえし、二人で恭平君のところま


で走った。


「お帰り、兄貴、翔子さん」


私たちは家に向かいながらいろいろな話をした。途中


恭平君が私を見て言った。


「あつ、それって兄貴のプレゼント?」


私の首には直人君からもらったネックレスが光ってい


た。私は恭平君の言葉に思わず下を向いてしまった。


それを見た直人君が照れくさそうに言った。


「いいだろ別に。」


彼は恥ずかしいのか多くは語らなかった。そしてただ


前を見て歩くだけだった。恭平君にはそんな私たちの様


子がおかしかったのか、クスクス笑いだした。


「なにがおかしいんだ?」


直人君は恭平君をにらみつける。


「さあ、なんだろうな?俺みたいな年頃は何見ても


おかしいんだよ」


「なんだそれ・・・」


直人君は恭平君の答えに不満そうな様子だった。しか


し、そんな彼の顔もどこか嬉しそうだ。彼からもらっ


たプレゼントのネックレスはあの日以来、肌身離さず


ずっとつけている。私の宝物だ。そして、それをつけ


ている私を見ることが彼の悦びでもあるのだった。


「じゃあここで。また連絡するよ」


家の前に着くと、それぞれ自分の家に戻って行った。い


つも一緒の直人君と、離れて行くのが妙に不思議な気持


ちだった。



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