そこに立っていたのは直人君だった。
直人君の前には、彼の自転車が放り出され、彼
の顔は目をつり上げ、怒りに満ちていた。
そして、自転車を飛び越え私たちの方へ駆け寄
って来た。もう彼には憎しみ以外の感情がない
というほどの勢いだ。
ジュニアも後ろを振り向き、直人君だと気付く
と驚いたように言った。
「あっ、君はあの時の・・・」
そんな言葉も耳に入らないかのように、直人君
は私の手を掴むと、ジュニアを睨みつけた。
「人の女に手ぇ出してんじゃねーよ」
彼は乱暴な言葉をジュニアに投げつけ、自転車
の後ろに私を乗せると、猛スピードでその場か
ら走り去った。私は後ろからジュニアを振り返
ったが、彼はただその場に呆然と立ち尽くすだ
けだった。
私は直人君にジュニアとの現場を見られたこと
への罪悪感でいっぱいだった。彼が怒っている
ことは、なにもしゃべらない様子で十分過ぎる
ほど理解できた。そして私は彼の誤解を解こう
と、必死に後ろで弁解していた。
「あのね、直人君。なんか誤解してるみたい
だけど、違うのよ。ジュニアったらすごくお
酒飲んでて、酔っ払ってたのよ。だから、ち
ょっとふざけてたって言うか・・・」
「じゃあなに、酔ってたら翔子さんもキスし
たりすんの?」
「そりゃーしないけど・・・。でも、ジュニ
アは・・・」
「なんであんな奴のことかばうんだよ。あいつ
は翔子さんのこと狙ってたんだよ。俺、店の中
から出てきたころから見てたんだ。声掛けよう
としたら、あんなこと・・・。ふざけんな」
私は余計直人君を怒らせてしまったようだ。もう
これ以上彼を刺激してはいけない、そう思い黙る
ことにした。直人君の機嫌が一刻も早く良くなる
ことを祈りながら、私は自転車の後ろで、彼の背