「先輩、どうしたんですか」
振り向くと、赤い顔をしたジュニアだった。
「ごめんなさい。今日はこれで失礼するわ」
そう言って店を出ようとする私に、ジュニア
はついてきた。
「じゃあ、そこまでお送りしますよ」
「いいわよ。主役がいなくなったら困るで
しょ。早く戻って」
「大丈夫ですよ。そこまでですから」
ジュニアは酔っているからか、大胆にも私の
肩に手をまわしてきた。こんな格好誰かに見
られたら言い訳できないよ。そう思いながら
店を出た。
そして、タクシーを拾おうと大通りに向かって
歩く私に向かってジュニアが言った。
「ねえ、先輩?」
さっきっと違うその真面目な顔つきに、妙な胸
騒ぎがした。
「先輩って本当に僕の理想の人なんです。そん
な先輩と一緒に仕事ができなくなると思うと、
正直つらいです。なんか僕、先輩のこと好きに
なったみたいです。こんな僕でよかったら付き
合っていただけませんか?」
突然の告白に、私はひどく戸惑っていた。でも
今のジュニアはすごく酔っていたので、ここは
冗談として受け流すことにした。
「もう、そんなこと言って、飲み過ぎでしょ」
そう言ってジュニアから離れようとした時、
彼の手が私の肩をグッと押さえたので、私は
ジュニアと向かい合わせの格好になってしま
った。これだと、彼の顔をどうしても見る格
好になってしまい、とても気まずい。
「僕は酔ってません。冗談なんかでこんなこ
と言ったりしません。僕は本気だ。本気で先
輩のこと・・・」
そう言ったかと思うと、次の瞬間、彼の顔が
近づき彼の唇が、私の唇に触れた。私は思わ
ず彼から離れようとしたが、彼の力が強すぎ
て離れることができない。私の頭はパニック
になりながら、必死の抵抗を続けた。
すると、彼の後ろでガシャンと大きな音が
した。と同時に怒鳴り声が聞こえた。
「何やってんだ!」
その声にジュニアの動きが止まり、私はすば
やく彼から離れた。そして声のする方を見て
私は血の気が引いていくのを感じた。