「ただいま」


部屋に戻ると、直人君がおしゃれに着飾って


ソファーに座っていた。


「お帰り」


「今日は早かったんだね」


「うん。今日は塾もないから。ねえ、翔子さ


ん急だけど、これから出掛けない?」


「いいけど・・・」


直人君の提案で私たちは出掛けることになっ


た。今日はなんだか直人君の口数がいつもよ


り少ない気がする。それになんかよそよそし


い。そんなことを思いながら彼の後ろを歩い


て行くと、おしゃれなイタリアンレストラン


の前で止まった。


「今日、ここ予約してたんだ」


直人君はそう言うと、店のドアを開け、中へ


入るよう手招きした。


「いらっしゃいませ」


私たちは窓側の席に案内された。


「びっくりした。どうしたの今日は?」


「へへへっ、たまにはこういうのもいいかな


ぁって思って」


直人君は少し照れたように笑っていたが、ど


こか緊張している様子だった。


「メニューをどうぞ」


手渡されたメニューを見ると、それぞれ好き


なものを注文した。しかし、なんとも落ち着


かない。直人君は明らかにいつもと様子が違


っているし、私は私で、矢野課長から言われ


たことが頭にあってうまく集中できないでい


た。それにしても、直人君のこの様子、いっ


たいどうしたのだろう・・・?私は少し不安


になった。すると、目の前にいる直人君が、


話はじめた。


「翔子さん、前に言っただろ。バイト代入っ


たら何かプレゼントするって。それで、恭平


が来たとき一緒に買いに行ったんだよね。あ


いつはこういうの選ぶの得意でさ。結構見る


目あるっていうか・・・。こういう時は頼り


になるんだよ。まあ、そんなわけで、これ、


受け取ってほしいんだ」


直人君はきれいなリボンのかかった箱を差し


出した。私は予期せぬ出来事に戸惑いつつも


彼の好意を素直に受け取った。


「ありがとう、直人君。うれしい!」


「うん。まあ、このためにがんばったような


ものだからさ。開けてみてよ」


彼は照れくさそうに水を飲んだ。私はリボン


をほどき、ゆっくりと箱を開けた。そこには


おしゃれなネックレスが入っていた。


「どう?俺そういうのよくわかんなくて。気


に入らなかったらごめん」


私はすごくうれしかった。すれしすぎて、涙


まで出てきてしまった。そんな私を見た直人


君はひどく慌てていた。


「どっ、どうしたんだよ。翔子さんなんで泣


くの・・・」


「ごめんね。すごくうれしくって。ありがと


う。すごく気に入ったよ。大切にするね」


私の言葉に安心したように、彼は「ふぅー」


と息を吐いた。よっぽど緊張していたのか、


彼のグラスはもう空っぽになっていた。


「今日は何事だろうって私ドキドキしてた


んだぁ。なんか直人君いつもと様子違うし


でも、こんなサプライズだったなんて」


「翔子さんのこと驚かせようと思ってさ」



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