「ねえ、恭平君は中学ではどうなの?」
「えっ、俺?うーん、普通かな」
「普通って?」
「兄貴はすごくもててたけど、俺は普通か
な?まあ、一応は彼女いるけど」
またまた、恭平君の話に反応した直人君が
大きく咳き込んだ。そして、慌てて水を飲
むと、恭平君に向かってどなった。
「おい、なにベラベラ言ってんだ」
「だって、翔子さんが聞くから」
「それはお前の話だろ。俺のことは聞いて
ない」
そう言えば私は、直人君の学校の様子とか
を、直人君本人以外から聞いたことがない
だから、恭平君の話は興味深かかった。
「いいじゃない、その話もっと聞かせてよ
ねえ、恭平君」
「だよね、ほら翔子さんもこう言ってるよ
お兄ちゃん!」
私たちの必死の頼みに、直人君は「勝手に
しろ」と言うように黙ってカレーを食べて
いた。このころの年齢になると、恥ずかし
いのか、自分のことを言いたがらないもの
なのだろう、と私は軽く考えていた。
「兄貴、本当にもててました」
「あっ、それわかる!だってこっちの高校
でも女の子が告白したって言ってた。でも
直人君には好きな人がいるんだって。だか
らふられたって・・・」
その話に、直人君の顔はみるみる赤くなっ
ていった。そして、いたたまれなくなったの
か、急に空のグラスを持って席を立ち、台所
に向かった。
私はそんな直人君をちらっと横目で見ながら
恭平君に聞いた。
「誰なんだろうね、その好きな人って」
「さあね、俺の口からは何とも言えないよ」
直人君には言えないことでも、恭平君には
ほいほい聞けてしまう。そんな私と恭平君が
こそこそと小声で話しているのがおもしろく
ないらしく、直人君は戻ってくるなり、グラ
スをわざと大きな音をたてて置いた。
「もう、俺の話はおしまい。なんか他の話に
変えろよ」
恭平君は直人君の様子を見て何かを察したよ
うに、それ以降はまったく別の話をした。
私はもっと聞きたかったけど、直人君の機嫌
を損ねてもいけないし、次の恭平君の話もお
もしろかったので、核心的な部分は聞けない
ままになってしまった。せっかくのチャンス