料理が運ばれてくるころには、二人は結構ほ
ろ酔い加減で、仕事の話で盛り上がっていた
私は、ワインを飲んでも少しも酔うどころか
ますます気が滅入って行くだけだった。
「先輩、今日はやけに無口ですね」
ジュニアが絡んできた。彼は酒に弱い。それ
は出張に行ったときに証明済だ。
「本当。朝倉先輩どうしちゃったの~?」
矢野課長も怪しい視線を私に送ってくる。さ
っきは、話をうまくかわしてくれたと感謝し
ていたのに・・。
「なによ、二人して。私はいつもこうだけど」
私は冷静をよそいながら、そう言った。すると
次の瞬間、まさかの事態が起こった。
「こちらへどうぞ」
隣の席に若い女の子たちが、店員に案内され
て来た。彼女たちは何かの話で盛り上がって
いるようで、大声で話していた。
「ねえ、ここでしょ、彼のバイト先って」
「そうよ。ここんとこ毎日来てるんだ」
「えらいよ、優花は。本当に好きなんだね」
「まあね、そういうこと」
「優花」という名前に聞き覚えがあった。な
んとなく、聞き覚えのあるようなこの声。私
は思わず隣の席をちらっと見た。すると、隣
の女の子の一人と目が合ってしまった。
「あーっ!翔子おねえさん!!」
うそっ。私は驚いた。ただ、ただ、驚いた。
なんで今日はこんなにも、災難が続くんだろ
うよりによって、直人君の同級生にまで会う
なんて・・・。最悪すぎるー。
「なに、あの子ともお知り合いですか?」
矢野課長がうつろな目で聞いてきた。私はう
なづくことしかできなかった。