「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「三人です」
「ではこちらへどうぞ」
今日は、前回来たときより少し時間が早い
からか、お客がまだ大勢いて、とても混ん
でいた。
店の中では、店員が料理を運んだり、テー
ブルを片付けたりと、忙しそうに動き回っ
ていた。私が見る限り、直人君の姿はなか
った。きっと直人君もあちこち忙しく動き
回っているのだろう。このぶんだと、なん
とかなるかも。ホッとしたのもつかの間、
私は固まってしまった。
「ご注文はお決まりでしょうか」
直人君の声だった。彼がよりによって私た
ちのテーブルに注文を聞きに来たのだ。さ
っきまで姿が見えないと思って安心してい
ただけに、私は一気に緊張がマックス状態
になった。
私はなるべく彼に気付かれないように、ひ
たすらメニューを見続けた。そして心の中
でひたすら祈り続けた。直人君、ここはど
うか私を無視してください。お願い、私の
この気持ち察してちょうだい。
「とりあえず、赤ワインください。ジュニア
は?」
「僕はビールにします」
二人が注文をし終えたので、次は私の番だ。
「じゃあ、私もワインで」
二人に悟られないよう、あくまでも普通にし
なくては・・・。直人君の顔は一度も見てい
ない。とにかくここは早く注文を聞き終えて