「やったわね。これで資料も完成したわ」


「二人ともご苦労様」


「本当に僕のミスですみませんでした」


「いいって、いいって。それより、お腹す


かない?」


「ええ、もうこんな時間ですもの」


「では、今日は僕のおごりということで、


さっそく食事でもどうでしょう」


私たちが反対する理由なんてなかった。


三人は会社を出ると、どこへ何を食べに行


くかを話しはじめた。


「私はイタリアンがいいです」


「私は和食が・・・」


「中華なんかどうでしょう」


みんな食べたいものが違ったので、なかなか


決まらない。


「ふふっ。そんな時は、いいところあります


よ。みんな好きなものが選べる・・・」


「そうね。そうしましょう」


矢野課長とジュニアが意気投合して言った。


そんな店このへんにあったかしら?そう思い


ながら二人の後ろをついて歩くと、だんだん


どこか見覚えのある場所にやって来た。


私は嫌な予感がしはじめていた。


「ここよ、ここ。ここだったらもめなくても


すむでしょう。それにアルコールもおいてあ


るし」


「ここのファミレス結構うまいって評判です


よ」


そう言って中に入りはじめた。しかし、私が


なかなか入ろうとしないので、矢野課長の目


が怪しくひかった。


「どうしたの?さあ、早く行きましょうよ」


急に彼女の勘が働いたのか、私に近づくと、


耳元で小さく言った。


「先輩、この店なにかあるんですか?」


「べっ、別になにもないです・・・」


彼女の鋭い指摘に、つい口ごもってしまっ


た。そんな私の態度に彼女は何かを察した


ように私の手をつかみ、店の中に強引に


連れて行かれてしまった。私はドキドキし


ていた。今日のこの時間、直人君は間違い


なくここでバイトをしているはずだ。どう


しよう。矢野課長なんて、きっと面白がっ


て直人君になにを言い出すかわからない。


ジュニアだってそう。この間のこともある


し、なんだか気まずい。うーん、どうすれ


ばいいの・・・。


あっ、そっか。直人君の顔を知ってるのは


私だけ。二人は私が言わないかぎり、絶対


にわかることはないんだ。直人君なら大丈


夫。きっと彼は、普通に接客して、それで


終わり。彼もきっと私の気持ち理解してく


れると思う。うん、多分・・・。





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