「でも、そんな風に自分の思っていること


を言える人って素敵だと思います」


「えー、普通でしょそんなの」


「なかなかそうはできないですよ。例えば


今日の名古屋支社の社員なんか、えらく気を


使っていたじゃなですか」


「そりゃー、ジュニアがいたから・・・」


「そう、それですよ。みんな僕の後ろにある


ものばっか見ていて、僕自信を見ていない気


がするんです。子供のころからずっとそんな


気がしてて・・・。みんな、僕に対してどこ


か遠慮しているっていうか、どこか本気じゃ


ないようなそんな気持ちを抱いてました」


それは仕方ないわね。ジュニアの抱えてる


ものが大きすぎるんだもの。大人のエゴかも


しれないけど、世の中そういう仕組みになっ


てるんだものね・・・。


私は心の中でそう思った。


「それに、女子社員達もそうですよ。僕が社


長の息子じゃなかったら、きっと見向きもし


ないだろうな」


「そんなこと言ってちゃだめよ。社長の肩書


とか、そういうの関係なしにジュニア自身の


よさを、わかってくれる人が絶対に現れるっ


て!!」


彼が、急に真面目な顔をして私のほうを見た。


「その点、朝倉先輩は違いますよね。僕のこと


全ったくそんな風に見ていない。お世辞とか


歯の浮くようなセリフも言わないし・・・。


なんか愚痴っぽくなりましたけど、朝倉先輩


は、話やすいっていうか、なんでも話せるっ


ていうか、なんて言うんだろう、あれ、俺な


に言ってんだ・・・」


ジュニアが真面目に言うので、少し照れなが


ら、緊張して聞いていた。そして、いつも


ならここで矢野課長がなにかを言ってきたり


するのだが、今日は二人だけなのでそれもな


く、妙に落ち着かない。


「先輩って本当に素敵だと思います。よく気


が付くし、優しいし・・・。なんか先輩と一


緒に仕事をさせてもらえて良かったなと思い


ます。今日もこうして、一緒に出張まででき


て・・・」


これ以上聞いていられない内容である。お酒


に酔ったせいもあるのだろう。彼の顔はすで


に赤く染まっている。ふと時計を見るともう


八時半をすぎている。直人君との約束の時間


が迫っていた。




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