会社に戻ると、女子社員の視線がやたら私に突き刺さる?
どうやら気のせいではなさそうだ。
二人だけで歩いているせいか、女子社員のいらぬ妄想をかき立てたようだ。
やっぱまずかったかしら・・・・。
そんなことを考えながら私たちは部署に戻った。
午後からは私たちが関係する会議はなく、通常業務をこなしていた。
ジュニアはもう一人でも仕事をこなせるほど、十分な仕事っぷりだった。
流石はジュニア。
私は感心しながら自分の仕事に追われていた。
部長と矢野課長が会議から戻ってきたのは、休憩時間が終わった頃だった。
「みんな、すまないが少し時間をくれ」
部長は戻るなり、部署全員に招集をかけた。
みんなは仕事の手を止め、部長のデスクに集まった。
ひょっとして・・・・?
私は昼休みに矢野課長が話していた、名古屋の件が決定したのだと思った。
すると案の定矢野課長の口からは・・・・。
「今日の会議で決まったことを報告します。今度新プロジェクトが立ち上がることはみなさんもご存じのことと思います。それに伴い、名古屋支社で視察をかねた報告会を行うことが決定いたしました。そこでわが部署から出張者二名をこちらで人選させてもらいました」
と、告げられた。
やはりそうだったわね。
私がそう思った瞬間、思わず矢野課長と目が合ってしまった。
なんか嫌な予感が・・・。
「えー、ではその二名だが、先ずは北村君。よろしく頼むよ」
「はい。ご期待に沿えるよう頑張ります」
ジュニアが選ばれた。
まあ、当然の事だろうけど。
ジュニアは自分が選ばれたことに対し、やる気をみなぎらせていた。
「そしてもう一人は・・・・、朝倉君、君だよ」
「へっ?私ですか?」
なんとも間抜けな受け答え。
予感が的中したことで、思わず本音が飛び出してしまった。
「あ、いえ・・・。私も頑張ります」
今更会社の決定に反対などできる筈がなくて。
私はしぶしぶそう返事をし直した。
って、なんで私な訳?
そう答えたものの、不安ばかりが募っっていく。
「朝倉先輩、頑張りましょう!!」
ジュニアが私に力強く言葉を投げかけた。
ああ、ジュニア、君だけが頼りだよ。
とにかく選ばれた以上やるしかないのだ。
目の前で矢野課長が意味深な笑みを浮かべていることに、この時の私は全く気づいていなかった。
みんなはそれぞれデスクに戻り仕事を始めた。
「ねえ、どうして私が選ばれたの?」
矢野課長に近づき、それとなく尋ねてみる。
すると彼女は嬉しそうに言った。
「だって、私の推薦ですから」
やっぱり!!
でもなんで?なんで私なの?
彼女が何を思って推薦したのか、私にはさっぱりわからない。
「なんで推薦なんか・・・?」
「それはもちろん、朝倉先輩が適任だって思ったからですよ」
またまた~。
私が適任って、そんな訳ないでしょ?
けど、そんな風に言われると、次の言葉が全く出てこない。
その後彼女はこうも付け加えた。
「なんか楽しい出張になりそうですよね~!!」
矢野課長は意味ありげそう言うと、私の顔を覗き込んできた。
楽しい?この出張が??
冗談じゃない!
矢野課長の言葉とは裏腹に、私は初めての出張ということで、事の重大さに、今から胃が痛くなる思いだった。
もう、矢野課長のせいで!
笑っている彼女を、本気で睨みつけていた。