直人君が夏休みに入った。
学校に行かなくても、塾だ、宿題だと相変わらず忙しそうで、彼は実家に帰らず、私のところにいることになった。
私が高校生の頃といえば、家で一日中ごろごろしていた記憶しかない。
そういえば昔、直人君や恭平君たちとよく庭でキャッチボールをしたり、虫取りにつき合わされたり、釣りに出かけたり、花火をしたりといろいろ楽しんだっけ。
なんか、あのころがとても懐かしい。
「ねえ、そういえば昔、よく花火をしたよね」
「うん、やったな。恭平がすごく好きでさ。雨の日もやろうって聞かないの」
「あったねー、そういうことも。ねえ、今夜久しぶりにやらない?」
「いいね、やろうよ」
「じゃあ、花火買いに行こうよ」
懐かしさも手伝って、この話はすぐに実行されることになった。
さっそく私たちは買い物に出かけることに。
花火の他に、直人君に必要なものも買い揃えるため、少し遠くまで出かけることにした。
「ねえ、こっちに来てこんな風に出かけるのって初めてじゃない?」
バスに揺られながら、外の景色を見ている直人君に話しかけた。
「そういわれれば、そうかも。だって、普段の買い物は近所のスーパーで済むだろ。たまにはこうやって出かけるのもいいかもな」
「でも直人君、せっかくの夏休みに友達とどこかへ遊びに行ったりしないの?」
「あいつらみんなバイトで忙しいらしい。彼女とのデート代稼ぐんだってさ」
「なるほどっ!!結構忙しいんだね最近の高校生は。私が高校生の時は、もっと遊びまくってたけど」
「俺もバイト探してみっかなー」
直人君が窓の外を眺めながら言った。
私はその言葉にドキっとした。
ひょっとして、直人君も彼女のためにってこと?
でも、怖くて真相を聞くことはできない。
そりゃー、直人君はかっこいいし、17歳の歳で彼女がいないほうがおかしいくらいだ。
あの「約束」のことなんて、覚えてるの私だけなのかも・・・。
やっぱりもう直人君は、忘れちゃってるのかな・・・・。
肩を落とし、ぼんやりと一人考えていた。
すると、「だってさー、翔子さんにごちそうしたりしたいもんな」って、直人君が照れ臭そうに笑いながら言った。
その一言で、どれほど私の気持ちが救われたことだろう。
バイトは私のため?
思わず顔がにやけて止まらない。
正直言って、凄く幸せなんですけど!
「いいよ~。その気持ちだけで~」
言葉までデレデレ状態。
「よっし、決めた!俺バイト探そっと!!」
彼は指をパチンと鳴らすと、にっこり笑った。
その顔が、あの公園で見た幼い直人君の笑顔と重なって見えた。
不思議な感覚に包まれながら、バスに揺られていた。