金曜日の朝。
朝起きると信じられないほど寒かった。
窓の外を見ると、うっすら雪が積もっている。
今年初めての雪だ。
どうりで寒いわけだ。
私は温かい布団の中から出るのをためらっていたが、そうも言っていられない。
今日は最終進路希望の提出日だ。
気合を入れ、起き上がった。
喉に少し違和感を感じたが、あまり気にせず仕度を済ませ、学校に向かった。
遠くの山々には、雪が積もり白く色を変えていた。
時折、空から雪が舞い降りて、小学生たちがキャッキャッと楽しそうにはしゃいでいる。
通勤途中の女性が、コートの襟を立て、寒さを防ぎながら歩く姿も見える。
そんな人々を見ながら、時々咳き込んだりもしたが、なんとか学校へたどり着いた。
「ごほっ、ごほっ・・・」
職員室でも咳き込んでいたため、隣の小山先生が心配して声を掛けてくれた。
「大丈夫ですか?風邪ですか?」
「すみません。朝から調子悪くって」
その後、保健室で薬をもらって飲むと、少し咳が席が治まってきた。
これなら大丈夫と思い、そのまま教室へ行き、ホームルームをはじめた。
生徒たちはいつものようにきちんと席に座り、姿勢良くこちらを見ている。
生徒が号令をかけ終わると、早速今日締め切りの進路希望用紙を集めることにした。
「全員揃ってますね。では、これは林先生に渡しておきます。保護者面談の日程は、決まり次第お知らせします」
私は集めた用紙を持って職員室に戻り、早速林先生に渡した。
「林先生、よろしくお願いします」
すると林先生は、すぐさまその用紙の中から何かを探し始めた。
「中野先生、田村君はなんて書いてありました?あっ、ありました!ありました!」
なるほど、リョウクンの進路が気になっていたらしい。
確かに、Y高の進路指導教師ともなれば、尚更のことだろう。
「ほう、なんて書いてありましたか?」
いつの間にか来ていた校長先生も、興味津々の様子で林先生に尋ねた。
「これです、見てください。『どこでもいいです』だそうです。わははは、ゆかい、ゆかい」
「ほほほほっ、田村君らしいですね」
二人はそう言って笑っていた。
私は何がおかしいのかさっぱりわからず、キョトンとした顔で突っ立っていた。
すると小山先生が、横からそっと教えてくれた。
「どこの大学でも行くって事ですよ。まあ、田村君が入れない大学を探すほうが難しいでしょうからね。本当にすごい奴ですよ、田村亮介は」
なるほど!エリートでなければ書けない言葉だわ。
彼は並外れた才能の持ち主なので、こんな風に書いても、誰も文句を言ったりしない。
むしろ逆に喜ばれているくらいだ。
本当に感心するよ、リョウクンには。
誕生日にあった学力テストも、堂々一位の成績を修め、周囲をあっと言わせた。
そして学校のテストも全教科満点を更新中だし、あいかわらず喧嘩もやっているって聞くし、一体いつ、どこで勉強しているのだろう。
まったく彼の勉強に関しては、謎が多い部分だ。