「これ、これ」


ポケットから鍵を取り出し、学校の玄関のドアを開けた。


「どうしたの?その鍵」


「校長先生に言って貸してもらった」


なんという信頼の厚さ。


ここまで彼はすごかったのかと、改めて感心させられてしまう。


鍵がようやく開き、私たちは校舎の中へ入って行った。


中は暗かったので、田村くんは携帯電話を懐中電灯代わりに使った。


そこで、私も携帯を取り出し、一緒に暗がりを歩いて行く。


校舎の中は昼間と違い、不気味なほどの静けさを漂わせている。


その中を、彼に手を引かれるまま歩いていくと、彼がようやくどこへ行こうとしているのか、だんだん私にもわかってきた。


この階段の先には、そう、あの屋上がある。


重い扉を開けた瞬間、目の前に大きな花火が大輪の花を咲かせていた。


「わぁーきれい。ここってすごいね」


私がうれしそうにはしゃぐ姿を見て、田村くんが後ろから急に抱き付いてきた。


そして、耳元でささやいた。


「ミサトチャンの浴衣姿、いいよな~。ねえ、俺のこと好き?嫌いになったりしてない?」


なんか、今夜の彼はいつになく色っぽい。


その上、艶めかしさもプラスされている。


「べ、別に嫌いになったりしてないわよ。むしろ・・・・、その逆・・・かな」


私はドキドキしながら、そう答えた。


「あっ、また顔が赤くなってる」


「うそ!!暗くて見えないでしょ」



私が彼のほうに体の向きを変えた瞬間、彼はいきなり私の唇に、唇を重ねた。


熱い、熱いキス・・・・。


優しくて、溶けてしまいそう・・・・・・。




「さっきの続き。ずっとこうしたかった。ミサトチャンの浴衣姿見たときから」


花火の光で、彼の瞳がいつも以上に輝いて見える。


花火をバックに、私たちは何度も何度も唇を重ねる。



すると、あまりに大きな轟音とともに、空いっぱいにたくさんの花火が連打した。


その音のすごさといったら、私たちの動きがピタリと止まってしまうほど。


「いけねぇー。また止まんなくなるとこだった」


彼はそう言うと、その場に腰を下ろした。


私もその隣にちょこんと座った。



「ここって、やっぱいいよな」


「うん、最高だよ。ここなら、本当、誰も来れないよね。田村君と一緒に花火見れてよかったわ」


二人、夜空を見上げる。


時折風が吹き抜け、暑さを和らげてくれる。


「また来ようぜ」


「うん来ようね。あっ、そう言えば!あの二人も、今頃花火見てるかしらね!」


何気なく言った私の言葉に、急に彼の顔つきが変わった。




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